輝くナースの仕事ぶりを紹介する「注目の看護師インタビュー」。今回は、夜間救急専門クリニックの柿沼恵子さんにお話を伺います。33歳、若くして看護師長。バリバリと看護にまい進しています。けれど、趣味の時間も大切にし、存分に楽しんでいる。そんな注目の看護師です。今回から、4回に分けてご紹介します。

*柿沼恵子さんインタビュー 1回目2回目3回目4回目(最終回)

柿沼恵子(かきぬま・けいこ)さん

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川越救急クリニック看護師長。看護専門学校卒業後、埼玉医科大学総合医療センターに勤務。手術室に4年間勤務後退職。常勤で二次救急指定の大学病院に勤務、ICU/救急外来兼任の部署に配属。勉強会で知り合った埼玉医科大学の上原淳医師が川越救急クリニックを開業すると聞き、二度目の勤務先を退職し、二次救急病院の手術室にパートタイムで勤務しながら待機し、開業とともに川越救急クリニックに転職。6年目となる。クリニック以外でもさまざまな医院・老人ホームなどで経験を積むためにパートタイム勤務。

正義感が強い看護師に憧れて

――なぜ看護師になろうと思ったのですか?

高3で進路を考えるときに、やりたいことが何もなくて(笑)。いろいろ考えてみたときに、1年前に入院していたときの看護師さんのことを思い出したんです。日頃はすごくやさしいのに、患者の命に関わるようなことがあると、ドクターにも臆せず、ハッキリと意見を言う。正義感があってすごくカッコいい、あんな女性になりたいな、と思いました。看護師は収入面でも安定していますよね。将来、結婚するかどうかもわからないし、資格をとって自立しようと。さめた高校生でした(笑)。

家から一番近い看護専門学校に3年通いました。大学に行くことは考えなかったですね。大学だと保健師や助産師の資格が取れるのですが、それには興味がなかったですし。医者や看護師の親類もいないような家に生まれ、授業料などで親に負担をかけているな、という自覚もあったので、学生時代は1年でも短いほうがいいと思いました。

21歳で看護師の資格が取れて、大学病院へ。とにかく経験を積みたい、高度医療にも携わりたいと思ったんです。具体的には、心臓疾患手術後の急性期を学びたい、と。心臓疾患集中治療の専門病棟で経験を積み、患者さんをきちんと助けられる看護師になりたいと思っていました。

それには大きな病院がいいと思い、自宅から通える埼玉医大総合医療センターに勤務したんですが…、自分の情報収集ミスだったんですね、心臓疾患集中治療の専門病棟はありませんでした。配属されたのは、希望に近いということで、心臓手術もある手術室でした。

「人を助けたい」というのも、看護師になった理由です。だから、結果的に手術室勤務は自分にピッタリでした。手術によって、重い病気の方も元気になる。その姿を見て、充実感を覚えました。

オペ室の忙しさに疲弊して

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――オペ室には4年間勤務したのですね。辞める要因となったのは?

大学病院は、インターンなどがいますので、看護師がやることを、インターンが代わってやってしまうことが多いんですね。ヘタすると、点滴をさすこともインターンがやってしまう。それでは看護師の技術的経験値が上がりません。
「人を助ける」という使命のもと、看護師としてできることをなるべくたくさん身に着けたいと思ったら、もう少し小さな病院のほうがいいのかな、と思ったのです。

それに、とにかく忙しいんです。昼間の手術は、あらかじめ予約された患者さんの手術が中心ですが、手術室の数や1日の時間数より、患者さんの手術数が多いんです(苦笑)。通常、日勤の手術は全身麻酔で行うような手術ですと、おおむね朝から3回が限度。ですが、それだとこなしきれないので、4回目の手術をする。当然、長引くこともあるわけで、そうなると夜勤の緊急手術とも重なってしまう。

定時に帰れることは、ほとんどなかったですね。手術の現場は嫌いではないですし、忙しいだけに経験はたくさん積めましたが、4年目になるとだんだん疲れを感じるようになって。
そして何より、忙しい中で、医療技術を磨き切れていないという不安感がありました。もっと医療技術を磨きたい、経験値を増やしたい――。そんな気持ちが強くなり、退職を考えるようになりました。

次回は、退職後に勤めた二次救急病院での勤務についてお伝えします。

<三輪 泉(ライター・社会福祉士)>

*柿沼恵子さんインタビュー 1回目2回目3回目4回目(最終回)

救急クリニック看護師長 柿沼さんの1日(3種の勤務体制の中で一番長いシフトの場合)

16:00 出勤。当院は定期ミーティングを持たないので、すぐ実務に入る。
機器の立ち上げ、点検をするうち、患者さん来院。薬剤・消耗品の在庫確認、必要時各業者に連絡調整。

19:00~ 市内のクリニックが閉まる時間には来院者が増え、忙しくなる。外来も多く、発熱や胃腸炎、中耳炎などいろいろ。

22:00 時間があいたら、勤務者のシフト表に着手。全員の希望をくみながら作るので時間がかかるが、勤務時間外の充実は大切だと考えている。手があけば、夕食休憩に入る。

23:00~ 救急車が来るなど急に多忙に。患者数は平均35人だが日によってもっと多い日も。この日は打撲擦過・挫創、めまい、骨折、鼻出血、急性アルコール中毒などなど。病状によって処置は様々で、洗浄・縫合処置、点滴、採血や酸素投与、CT検査なども。心不全や脳出血、呼吸不全などの場合は別の病院に転院搬送となることも。

翌9:00 この日の勤務もそろそろ終わり。夜勤中に作成した勤務表も完成。院長と医師やスタッフ、見学者、関係者の来院予定を共有し、退社。