さまざまなキャリアを経て、職場で輝く看護師の方に、そのお仕事ぶりをうかがう、「注目の看護師インタビュー」。3人目にインタビューするのは、病院に勤務しながら、在宅医療に従事するコミュニティナースである秋元里美さん。高知県での准看護師からキャリアをスタート。途中、出産や育児で10年間休職しながら、59歳にして今の仕事に就いたいきさつや、今後の目標などを、4回に分けて伺います。

*秋元里美さんインタビュー 1回目2回目3回目4回目(最終回)

秋元里美(あきもと・さとみ)さん

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東埼玉総合病院内 在宅医療連携拠点 コミュニティナース。経験30年のベテラン。高校卒業後に准看護師資格を得て総合病院に勤務。29歳のとき一念発起し、看護学校に入りなおして正看護師資格を取得。復帰後に結婚し、出産・育児のため10年間休職する。クリニック、訪問看護事業所勤務等を経て、2005年から東埼玉総合病院に勤務。2016年4月からは地域を支える看護師(現職)となる。

准看護師から勉強し直して、正看護師に

――秋元さんは、高知県の出身で、地元でまずは准看護師として勤務したのですね。

はい。高校を卒業する頃に、母に「これからは、女性でも手に職をつけたほうがいい」と言われまして。自分も、事務員などになるより、看護師がいいと思い、准看護師の養成所に入り、その後は当地の総合病院で、正職員として准看護師をやっていました。

しかし、10年ほどたったところで、准看護師を廃止する流れがあるということを知りました。当時29歳、もしかしたら、ずっと独身かもしれないな、という考えが頭をよぎりまして(笑)。ずっとこの仕事をするなら、今のままでは不安だ、正看護師の資格が欲しい、と思うようになりました。それで29歳で思い切って休職し、看護学校に2年間通って、正看護師の資格を取得して、もとの病院に戻ったんです。

が、人生は想像通りではないのですね。その1年後に夫と知り合い、夫の勤務が東京になったので、高知の病院をやめて、埼玉県に転居しました。ちょうどそのころ、ひとり息子が生まれました。私の実家は高知、夫の実家は北海道で、育児を助けてくれる身内もいない土地。看護師は続けられないだろうと考えまして、残念ですが、しばらく看護師として働くことをあきらめたのです。

クリニックや訪問看護から看護職に復帰

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――お子さんが小学校5年生のときに復帰されましたね。

はい。男の子ですし、母親がいちいちそばについている必要もなくなってきて。でも、夫は帰宅が遅く、育児を分担することもできないので、最初は昼間の時間で働けるクリニックに勤めたんです。けれど、半年ぐらいたつと、クリニックから「土日も勤務してほしい」と言われまして。それは、当時の家庭の状況では難しく、お断りすると同時に、退職したんです。

次に勤務したのは、訪問看護事業所でした。訪問看護なら、育児をしながら、平日昼間の時間帯に勤務できる。私が看護師を始めた頃はなかった職種ですが、「医療の面では、そんなに難しい患者さんは自宅にはいないから大丈夫」と言われまして。時間の融通がきくことをメリットにして、勤務し始めたんです。

しかし、在宅の患者さんを看護する仕事は、本当に奥が深く、また、幅広い知識が必要です。病院なら、科ごとに分かれているので、自分の科の医療知識や経験でいいのですが、在宅ですと、訪問した方が、どんな疾患を持っていらっしゃるのか、行ってみないとわからない。褥瘡がひどくて処置が難しい方、経管栄養の方など、自宅でこのような方を看護するのかと、驚きました。医療の知識はもちろん、介護やリハビリの知識も必要で、力量不足を感じ、患者さんに申し訳ないと思いながらの2年半勤務しました。

――その後、現在勤務している東埼玉総合病院に、非常勤として勤務するのですね。

はい。やはり、知識不足の状態で、在宅の患者さんに接するのは恥ずかしいことで申し訳ないと感じました。専門の科でしっかり学び、働くほうが自分には合っていると思ったのです。
最初の1年は、非常勤で朝8時半から13時半までの勤務。1年後は、まずは昼間の常勤になり、後に夜勤もこなすようになりました。

次回は、外来での秋元さんの勤務の様子をお伝えします。

*秋元里美さんインタビュー 1回目2回目3回目4回目(最終回)

コミュニティナース 秋元さんの1日

8:30 出勤。当日の勤務確認を含めたドクターとのミーティング。同僚看護師や事務担当とも、この日の行動について確認する。

9:30~ 市内にある「暮らしの保健室」に車を運転して出向き、地域の方の相談にのる。

12:00 一度病院に戻る。昼休憩。

13:00 午前中の相談内容によっては、地域包括や介護事業所などに問い合わせ、連携をはかる。SNSなどに活動を発信するのもコミュニティナースや事務担当の仕事。

14:30 市内にある別の「暮らしの保健室」に出向き、地域住民と話す。

17:00 病院に戻り、報告書を書き、必要なら各所と連携して問題解決の糸口をさぐる。