救急患者のニーズに応え、すばやく患者さんを診療する夜間専門の川越救急クリニック。その存在は、軽症の患者さんを夜間外来で多数見なければならない救命救急センターなどの医療機関を、本来の形に戻す役目も果たしています。ここで働き始めた柿沼さんは、さらに看護師としてのキャリアを高めていきます。

*柿沼恵子さんインタビュー 1回目2回目3回目4回目(最終回)

柿沼恵子(かきぬま・けいこ)さん

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川越救急クリニック看護師長。看護専門学校卒業後、埼玉医科大学総合医療センターに勤務。手術室に4年間勤務後退職。常勤で二次救急指定の大学病院に勤務、ICU/救急外来兼任の部署に配属。勉強会で知り合った埼玉医科大学の上原淳医師が川越救急クリニックを開業すると聞き、二度目の勤務先を退職し、二次救急病院の手術室にパートタイムで勤務しながら待機し、開業とともに川越救急クリニックに転職。6年目となる。クリニック以外でもさまざまな医院・老人ホームなどで経験を積むためにパートタイム勤務。

続けるためには私生活を充実させることも大切

――実際に、夜間専門の救急クリニックに勤務していかがですか? 夜間勤務ばかりだと大変なのでは?

そんなことないですよ。勤務は16時から22時、22時から朝9時、16時から朝9時の3パターンがあるのですが、もちろん毎日勤務するわけではありませんし。長時間勤務もあるので、出勤は週に2~3日ぐらいというのが平均的な勤務でしょうか。そうすると、昼間の時間を自由に使えることもあり、むしろ大学病院に勤務していたときより、自由度が高く、体も疲れないですね。

当初は看護師の人数も少なかったのですが、今は常勤が6人、アルバイトが6、7人います。土日は50人以上の患者さんが来院することが多いですが、それでも十分なスタッフを確保できます。シフト表を作るのも私の仕事なので、それぞれの都合を考え、オフタイムも充実できるようにしています。

お子さんがいる看護師は、学芸会や運動会も行きたいでしょうし、趣味を充実させたい人もいる。当院のスタッフには、バンド活動をしている者もいるんですよ。長くこの仕事を続けて行くにはプライベートな時間の確保もとても大事。みんなの希望を叶えて働きやすい環境づくりをするのも、私の役目だと思っています。看護師長と言っても、私と同期の者、私よりもベテランの者もいますし、一緒にこのクリニックを作り上げるというイメージですね。

私自身も、好きなアーティストがいまして、コンサートに行くのが趣味です。そんな時間もいただき、気持ちを切り替えながら、また看護の仕事に正面から向かっていけたらいいな、と思っています。

外来や往診も始め、診療の幅が広がる

処置室での準備の様子。左が柿沼さん
処置室での準備の様子。左が柿沼さん

――開院当時と今とでは、埼玉県の救急医療の状況は変わりましたか?

変わりましたね。以前のように、患者さんを選び、救急車の依頼を無視するようなところは減っています。その分、当院も余裕ができるようになりました。地域住民の方々にとって、いい方向に動いていると思います。

もちろん、当院はこれまで以上に夜間救急診療に力を注ぎます。救急医療に必要な機器や、朝まで過ごす入院の設備も整っていますが、そのほかに内視鏡検査や往診も始めましたし、診療内容も幅広くなりました。夜間外来は、町のクリニックが閉院してからの時間帯に診療できるので、忙しいビジネスマンの方々にも便利なのではないでしょうか。往診は、来院できないような高齢者や障害を持つ方にも対応しています。

診療の幅が広がった分、勉強することも多いです。プライベートな時間に、医療関係の研修や勉強会に行くことも多いですね。院長は「病院に還元できる勉強をしてくるなら、受講料は支払う」と言ってくれますが、自腹でお金を払ったほうが身につくこともあり、自分で自由にあちこちの勉強会に出かけています。

医療はどんどん新しくなりますし、救急医療も変わっていく。それに対応するだけでなく、一歩進んだ医療従事者になるためには、常に前を向いて突き進んでいくことだと思っています。当院も今後、さまざまな専門分野の医師を迎えていくと思いますし、クリニックの成長と合わせて、自分も成長していきたいですね。

次回最終回は、柿沼さんが考える「医療のあり方」についてお話いただきます。

<三輪 泉(ライター・社会福祉士)>

*柿沼恵子さんインタビュー 1回目2回目3回目4回目(最終回)

柿沼さんが考える 「夜間専門救急のやりがい・楽しさ」

■急変する患者さんに素早く対応できる
■他のクリニックが閉院したあとのニーズに応えられる
■人命救助の最先端としての仕事に手ごたえを感じる
■地域医療に貢献できる