今回から、職場で輝く看護師の方に、そのお仕事ぶりをうかがう、「注目の看護師インタビュー」を連載します。

第1回は、関東一円で在宅医療を行う悠翔会(ゆうしょうかい)の看護部長、渡辺美恵子さんに登場願います。
現在、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)に常駐し、訪問看護師として勤務している渡辺さん。かつては助産師だったという、そのユニークな転身について、まずはお伝えします。

*渡辺美恵子さんインタビュー 1回目2回目3回目4回目(最終回)

渡辺美恵子(わたなべ・みえこ)さん

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医療法人社団 悠翔会 看護部長。病院の助産師10年務めた後、デイサービスの看護師として4年間勤務。訪問看護の魅力に目覚め、地元の在宅療養支援診療所で訪問看護師を13年務めた後、2009年より現職。3人の子どもを育てながらフルタイムで勤務。在宅で働く看護師の仲間と「生活を支える看護師の会」を立ち上げ、勉強会を開く。また、悠翔会が地域・多職種連携のために定期開催する「在宅医療カレッジ」の運営にも深くかかわる。

最初は急性期病院の助産師だった

――渡辺さんは、周囲の人たちに「姐さん」と呼ばれるほど頼りにされる看護師です。看護師歴は何年ですか?

30年以上になりますね。ただ、最初は助産師だったんです。
高校3年で進路を決めるとき、保育士になろうと思っていました。家庭裁判所の調査官というのもあこがれたのですが、「頭がすごくよくないとできない仕事だよ」と言われて、あっさりとあきらめまして(笑)。

赤ちゃんが大好きだったんですよね。でも、たまたま歯科医の待合室で、隣合わせた患者さんとお話ししたら、その方が保育士さんで。「保育士もいいけれど、看護師になって、小児科や産科の看護師さんになるのもいいんじゃない?」と言われまして。単純だったので、その気になりました。

――総合病院の助産師という仕事は、産科の中心的存在ですね。

ハイリスクの出産は医師でないとけないのですが、当時は生意気にも、「自分が赤ちゃんを取り上げるんだ」という自負がありました。不謹慎ですけれど、急変されたときなどの緊迫感。その瞬間に燃えていました。今の訪問中心の看護とは、時間の流れ方も、患者さんに対する思いも、対局にありますね。

その後結婚して、子どもを産みたいという気持ちもあって、夜勤のないデイサービスの看護師になりました。

デイサービスを立ち上げ、訪問看護にも目覚めて

――当時は、介護保険制度が始まる前でしたか?

1_2はい、「措置」の時代です。地域包括ということばはなく、ケアマネジャーもいませんでしたが、地域で連携する多職種で連絡を取り合っていました。
「この方は介護サービスを利用してもらえるか」を決定するには、区の担当ヘルパーが地域の看護師や保健師などで相談し、区の措置会議で決めていたと思います。

私が立ち上げから関わったデイサービスの職員は、昨日まで指輪を作っていたとか、マッサージ師だったというような人達が集まっていて。「渡辺さん、この人をお風呂に入れて大丈夫ですか? 血圧どれぐらいならOKですか?」なんて聞かれるのですが、上手く答えられませんでした。知っていても、きちんと学び、具体的に言語化して説明しないと、医療職でない場合には伝わりにくい。それを痛感しました。こんな看護師に、よく懲りずに付き合ってくれたな、と思います。

仲間と夢中で運営して、デイサービスに勤務している間に、子どもを2人産みました。充実していましたが、たまたま、地域で在宅診療をしているドクターに出会い、在宅の魅力を知りまして。どうしてもやりたくなって、デイサービスを離れて、訪問看護師になったんです。それがいまの仕事につながっていますね。

次回は、訪問看護に目覚めてからのお仕事の内容についてお伝えします。

*渡辺美恵子さんインタビュー 1回目2回目3回目4回目(最終回)

渡辺さんの訪問看護師としての1日

*サ高住内の事業所にて訪問看護師として勤務する渡辺さんの場合(看護部長の業務は除く)

9:00 事業所へ出勤。オペレーターや介護職から申し送りを受け、打ち合わせ。

9:30 サ高住内の利用者の部屋を訪問。現在は、胃ろうの注入をする方を複数訪問。
その後、その日の訪問看護予定の利用者の部屋を順に訪問、検温などのバイタルチェックや全身状態や生活状況の把握とともに、必要時には医療処置なども行う。

12:00 午前の看護内容を、自社開発の電子カルテに記載。昼休憩。

13:00 午後は引き続き、訪看利用者の居室を訪問。必要時ケアや処置を行う。

14:00 新しく入居する利用者がいた場合、アセスメントのためにその方の自宅を訪問。他に健康相談やアドバイスが必要な方への対応、カンファレンスへの参加など。

*体調に問題のある利用者がいれば、必要に応じ担当医師と連絡をとり、往診の要請や急性期病院に運ぶこともある。

16:00 サ高住内の胃ろうの注入をする方を訪問。

17:00 午後の看護内容を電子カルテに記載。オペレーターや介護職に申し送り。

18:00 緊急連絡用の携帯電話を持って帰宅。

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