自分らしく働き、キラキラ輝いている看護師の方にお仕事ぶりをうかがう、「注目の看護師インタビュー」。
第2回は、柳下将德さんに登場いただきます。病院の医療事務の仕事をしているうち、「看護師になろう!」と痛感し、23歳から専門学校に通って27歳で資格取得。その経歴だからこその柔軟な発想と、ユニークな仕事ぶりを、4回に分けて連載します。
*柳下将徳さんインタビュー 1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)
柳下将徳(やぎした・まさのり)さん
小規模多機能ホーム「ぐるんとびー駒寄」看護師。高校卒業後専門学校に入学し、医療事務・簿記・ヘルパー2級(現在の介護職員初任者研修に相当)を2年間で取得後、神奈川県内の総合病院で病棟クラーク業務に就く。23歳から4年間、看護学校で学び、正看護師の資格を得る。同病院に戻り、生活相談員とともに退院後の生活指導と生活環境整備担当として4年間勤務。2015年8月より、小規模多機能ホームぐるんとびーに勤務。
クラークだけでは助けられない
――柳下さんは当初、総合病院の医療事務の仕事をしていたんですね。
はい。専門学校で医療事務の資格などを取得し、病院の乳腺外科病棟のクラークでした。男性なのに乳腺外科、ちょっと珍しいですね(笑)。
病棟には退院する方も多いですが、入院中に最期を迎えるケースも多くて。覚悟の上で入院している方には、最期の希望を叶えたいな、という思いを強く持っていました。もともと僕は「患者さん」「病院職員」という立場でのお付き合いをあまり意識しないほうで、よく患者さんと世間話をしたり、思いを聞かせてもらったりしていて。そんな中で「何か手伝いたい」と思っても、当時は立場上、叶わないことも多くありました。
家に戻りたいとか、ちょっと外出して買い物がしたいとか。入院し、ここで最期を迎えるとなれば、やり残したことをやりたいですよね。看護師はみな忙しいですから、なかなか話を聞いて、希望を現実につなぐことは難しいです。「僕が付き添ってあげたい」と思うのですが、なかなかOKがもらえません。というか、「クラークなのに、何言ってるんだ」という感じです。まあ、もっともな意見です(笑)。
「何かあったらどう責任取るの!?」 何度も言われました。
外出中に急変する可能性も高い患者さんを病院の外に連れ出すなんて、言語道断。その意見もよくわかります。しかし、ご本人にしてみれば、あとわずかな命、いつ何があってもしかたがないし、それよりやりたいことを少しでもやって、人生に納得したい。――きっとそう思ってるんじゃないんだろうか、と思っていました。
23歳で看護専門学校に入学する
患者さんのそんな願いを身近で感じるだけに、もどかしくて。事務職では寄り添えない、看護師の資格が必要なんじゃないか――。その思いがどんどん強くなりました。
看護師の同僚とお酒を飲んでいるときに打ち明けると、「それなら、今から看護師の資格を取ればいいじゃない」と。ちょうど、病院が看護専門学校の実習を受け入れ始めた頃で、学校の担当者と知り合いになり、「うちで学んで資格を取ったら?」と言われまして。いろいろ考えた末、資格を取得することに決めました。
専門学校には4年制のコースがあり、一番授業料が安かったのが理由で(笑)、そのコースで入学しました。最初の2年は午後からの授業だから、午前中だけ病院に勤務。残りの2年は朝から授業なので、いったん休職して、勉強に本腰を入れました。授業後は、アルバイト。授業料がとても安い学校で助かりましたが、その授業料は当然自分で支払います。実家暮らしで家族に助けてもらいましたが、それも最小限にしたいと思っていました。
4年間で卒業し、正看護師の資格を取得して、病院に復職。退院後の生活指導や環境整備を中心に、生活相談員と組んでサポートをする業務に就きました。
*柳下将徳さんインタビュー 1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)
看護師 柳下さんの1日
9:00 出勤。スタッフと打ち合わせ後、お迎えのため利用者さん宅を車で訪問。
9:30 利用者さんを乗せて、ぐるんとびーへ戻る。バイタルチェック後、利用者さんと今日の行動の確認。
11:00 利用者さんと一緒に、外に食事に行く。
12:00 飲食店に到着、昼食。利用者さんそれぞれの薬の確認、投薬。
13:30 ぐるんとびーに戻り、別の利用者さん宅へ訪問。
14:00 利用者さん宅で褥瘡処置、バイタルチェック。
15:00 別の利用者さん宅へ。この日は、いつもと様子が違ったため、訪看とも連絡を取り合い、医師の診断が必要となり医師に連絡。
16:00 利用者さん宅に医師到着、診療を受け、アドバイスに従う。
17:00 ぐるんとびーに帰着。宿泊の利用者さんのバイタルチェック。
18:00 宿直のスタッフに引継ぎ、今日の報告書の仕上げ、次週のイベントの準備の確認などをして業務終了。
18:50 この日は、週1回ボランティアで活動している障害者デイケアに顔を出す。利用者さんの状態などを聞き取り、次週に備える。