病院の看護師から、介護系の居宅介護を支援する施設の看護師へ。柳下さんは、働き方がまったく違う職場に転職することになりました。しかし、これまでもやもやと考えていたことが、一気に現実になり、仕事への取り組み方も変わりました。今回は、柳下さんの現在の仕事について詳しく伺ってみました。
*柳下将徳さんインタビュー 1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)
柳下将徳(やぎした・まさのり)さん
小規模多機能ホーム「ぐるんとびー駒寄」看護師。高校卒業後専門学校に入学し、医療事務・簿記・ヘルパー2級(現在の介護職員初任者研修に相当)を2年間で取得後、神奈川県内の総合病院で病棟クラーク業務に就く。23歳から4年間、看護学校で学び、正看護師の資格を得る。同病院に戻り、生活相談員とともに退院後の生活指導と生活環境整備担当として4年間勤務。2015年8月より、小規模多機能ホームぐるんとびーに勤務。
ひとりの人を切れ目なく看護できる場で
現在は、藤沢市内の小規模多機能ホーム、ぐるんとびー駒寄で、看護師として勤務しています。小規模多機能ホームとは、介護保険サービスを利用する介護施設で、自宅での暮らしを中心に生活するためのサービスを提供しています。
在宅での暮らしに必要な介護サービスというと、訪問介護とデイサービスが主なものです。このふたつは違う事業所が提供することが多いですが、そうなると、家に来てサービスをする介護職と、デイサービスでその人をみる介護職とのつながりが持ちにくくなります。
そこで、同じ事業所で、訪問介護サービスとデイサービスの両方の機能を持ち、関わるのが、小規模多機能ホームです。また、体調が悪く、自宅での生活が不安な時期や、入院し退院直後の健康状態が不安定な時期など、自宅でひとりで過ごすのが心配な時期に、宿泊という形で見守りをすることもできます。
つまり、一人の方を、切れ目なく見守ることができるのが、「小規模多機能」というサービスなのです。職員は主に、介護福祉士などの介護職です。健康状態のケアをするために、看護師も必要とされます。
私は看護師ではありますが、ヘルパーの資格も持っていることもあり、生活支援の部分でも利用者さんを支えます。利用者さんの自宅へ訪問して、バイタルチェックもしますが、生活援助もします。デイサービスへの送迎や昼食準備などもします。
生活の中で関わり、病気の予防につなげる
看護職なのに、介護もするのか、と言われることがありますが、ひとりの利用者さんをできるだけしっかりみたいと思えば、短時間で関わるのではなく、生活の中で長時間関わり、その人の評価をすべきだと思うのです。
たとえば、病院だと、誤嚥性肺炎を起こしてから接し、その対処をすることになりますが、ここでは誤嚥性肺炎を起こしたのははじめてなのか、前々からなのか? 長く関わる中で評価できます。
また、高齢者は「今日はちょっとおとなしいね」「いつもより落ち着かないね」といったことが、体調不良や急変の兆しだったりします。普段から一緒に居れば、こうした小さな変化を見逃さず、発病の前に対処できることもあります。
ぐるんとびーで連携している医師は、志を同じくしている仲間です。利用者さん宅を訪問した際に、体調不良で心配なとき、ドクターに連絡すると、的確なアドバイスを迅速にもらえることも、非常に心強い。
病院で、病気やケガを治す、というのも大事な仕事ですが、介護の現場では、病気やケガを未然に防ぎ、予防して健康につなげることができる。もちろん、そのためには知識も経験も豊富でなくてはなりません。勉強し、周囲の介護職や医師と連携しながら、理想の看護を目指していける環境がある。とても恵まれていると思いますね。
*柳下将徳さんインタビュー 1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)
柳下さんが考える 「小規模多機能ホームの看護師のやりがい・楽しさ」
・患者さんを切れ目なく見守ることができる
・小さな体調不良を見逃さず、医療にスピーディにつなげることができる
・病気の予防や対策ができる
・信頼できるドクターと素早く連携できる