主に乳腺・内分泌外科で抗がん剤治療室の要のナースとして勤務していた秋元さん。「看護師と患者さん」という関係を超えて、「ひとりの人対人」としての関係を築き、患者さんの心をなごませてきました。思わぬことから、コミュニティナースとして、2016年から勤務することになった背景には、院内でのこうした関係性が生かされているのだと感じます。

*秋元里美さんインタビュー 1回目2回目3回目4回目(最終回)

秋元里美(あきもと・さとみ)さん

image003

東埼玉総合病院内 在宅医療連携拠点 コミュニティナース。経験30年のベテラン。高校卒業後に准看護師資格を得て総合病院に勤務。29歳のとき一念発起し、看護学校に入りなおして正看護師資格を取得。復帰後に結婚し、出産・育児のため10年間休職する。クリニック、訪問看護事業所勤務等を経て、2005年から東埼玉総合病院に勤務。2016年4月からは地域を支える看護師(現職)となる。

患者さんが本音で話せる場を作りたい

――抗がん剤治療室では、実際に患者さんとはどんなコミュニケーションをしていましたか?

もちろん患者さんですから、抗がん剤治療をスムーズに受けていただくことが、業務の中心です。朝の申し送りで、その日に予約が入っている患者さんの病気の度合など確認し、お互いの持っているその方の情報を共有します。「最近は体力が落ちていらっしゃるから、今日の治療はつらいかもしれない。つらくなったらすぐに訴えていただけるよう、お声がけしよう」などと、話し合います。

また、治療を待っている間、治療後のひとときに、質問をされたら、答えられることは看護師が答えますが、ドクターにつないだほうがいいことはないか、言葉の奥に潜んでいる心情や病気の進行具合から、早めに対処しておいたほうがいいことはないかなど、考えながら会話をします。

それだけではなく、長期間通院される顔見知りの方が多いですから、庭でとれた野菜のお話、出かけて行った旅行の話など、プライベートなお話もされます。雑談をしながら、少しでも楽しい時間を過ごしていただこうと心がけていました。

その一方で、「つらいときには泣ける場、吐き出せる場でありたい」と、メンバーと話し合っていました。患者さんは、ご自分の病気に不安を感じていても、家庭ではお子さんやご主人を悲しませまいと、ムリに明るくふるまうことが多いのです。その分、ここではご自分の心に忠実になっていただければと思っていました。

在宅医療と地域包括ケアのあゆみをまとめたパンフレット。地域の取り組みがあたたかみあるイラストともに紹介されている。
在宅医療と地域包括ケアのあゆみをまとめたパンフレット。地域の取り組みがあたたかみあるイラストともに紹介されている。

急きょ、在宅医療に携わることに

――そんなやりがいが多い仕事を続けていて、この在宅医療連携拠点に異動してきたのはなぜですか?

実は、2017年に私は60歳を迎え、常勤看護師としては一度退職することになります。その後は非常勤として勤務することになるんですね。外来は、非常にやりがいのある職場ですが、月に6回程度夜勤がありまして、年齢とともにだんだん対応がつらくなってきました。日勤で勤務できるところ、と考えていたところ、上司から、この在宅医療連携拠点(通称「菜のはな」)への異動をすすめられました。

訪問看護の経験があることや、地域に出掛けていくための運転免許があること、また、人間関係を築くことが好きだという性格もあって、自分でも適していると考え、「では、2017年になったらお願いします」と伝えていました。ところが、拠点のナースだった方が体調を崩されて退職したため、急きょ、「常勤のうちから来てほしい」と言われ、2016年4月から勤務することになったのです。

退職された看護師は、「菜のはな」の立ち上げから関わり、ドクター1人、看護師1人、事務担当2人の小さな所帯を、地域の連携の要にするところまでやり遂げたすばらしい方です。その土壌があっての在宅医療連携拠点です。私にはその方のような能力はありませんが、同僚看護師と2人態勢で、病院を拠点にしながらの在宅医療をどう進めていくか、考えています。

次回最終回は、在宅医療を未来につなげる働き方についてお伝えします。

*秋元里美さんインタビュー 1回目2回目3回目4回目(最終回)

秋元さんが考える 「コミュニティナースのやりがい・楽しさ」

■患者さんと「人対人」のつきあいができる
■地域の中に入り込んで、患者さんと話し合うことができる
■病院では言えない悩みをすくい取り、解決につなげることができる
■地域にたくさんの知り合いができる