高齢者が可能な限り自宅で自立した生活を送れるように、医師、歯科医師、薬剤師、栄養士などが通院困難な利用者の自宅を訪問し、療養に必要な管理・指導を行うとともに、よりよいケアプラン作成に結びつけていくサービス。

居宅療養管理指導のサービスが受けられる人とは?

要介護1〜5の認定を受け、通院ができず、以下のような状態にあるため、居宅療養管理指導のサービスが必要であると医師が認めた人。

(1)病状が不安定な人
(2)病状観察や適切な判断が必要な疾病(糖尿病、心不全、慢性呼吸不全、慢性腎臓病、がん、褥瘡)を持っている人
(3)リハビリテーションを必要とする人
(4)酸素吸入や呼吸器管理が必要な人
(5)入院、入所の判断を必要とする人
(6)口腔や歯の問題を持つ人
(7)虚弱な人や精神的に不安定(認知症、うつなど)な人

居宅療養管理指導のサービス内容

1.医師・歯科医師が行う「医学的管理指導」

医師や歯科医師が利用者やその家族の自宅を訪問し、介護方法や介護サービスの利用法など、計画的かつ継続的な医学的管理指導や助言を行う。同時に医師や歯科医師は、利用者の同意を得たうえでケアマネジャー(介護支援専門員)や介護サービス事業者に情報提供を行い、よりよいケアプラン作成に結びつけていく。

2.薬剤師が行う「薬剤管理指導」

薬物の作用は、加齢に伴う代謝吸収機能の低下によって変化するため、高齢者は薬物による副作用を起こしやすい。また、高齢者は複数の疾患を抱えて多剤併用をすることが多いために、飲み忘れや飲み間違えなども起こしやすく、嚥下障害があるために薬の服用が困難というケースも少なくない。
薬剤管理指導とは、そうした問題を抱える高齢者の自宅を医療機関や薬局の薬剤師が訪問し、適切な服用方法、管理方法を指導しながら、最小限の薬剤で最大の効果を出すとともに、薬の副作用や中毒などの有害作用を未然に防ぐために行うもの。薬の安全性だけでなく、先発医療品に比べて安価な料金のジェネリック(後発)医薬品の活用など、経済的な相談もできる。

3.管理栄養士が行う「栄養指導」

高齢者は、加齢とともに消化吸収機能や咀しゃく力、唾液分泌量が低下。食事量が減り、低栄養に陥りやすい。低栄養になると、免疫機能の低下から感染症を起こしやすくなるなど、あらゆる疾患の原因になることから、栄養指導は厚生労働大臣が定める特別食の提供を必要とする利用者(*下記参照)と、医師が低栄養と判断した利用者を対象に行われている。
管理栄養士が利用者の自宅を訪問して摂食状態、嚥下状態、食生活などを確認後、「栄養ケア計画書」を作成して助言・指導を行い、利用者の栄養状態は定期的にモニタリングして医師に報告。必要に応じて計画を見直していく。

*厚生労働大臣が定める特別食
腎臓病食、肝臓病食、糖尿病食、胃潰瘍食、貧血食、膵臓病食、脂質異常症食、痛風食、嚥下困難者のための流動食、経管栄養のための濃厚流動食、および特別な場合の検査食など

4.歯科衛生士等が行う「歯科衛生指導」

義歯の汚れや細菌感染症である歯周病の悪化は、口内炎や誤嚥性肺炎などを引き起こす大きな原因の一つ。歯科衛生指導は、訪問歯科診療を行っている歯科医師の指示に基づき、歯科衛生士等が利用者の自宅を訪問して口腔内の清掃、義歯の清掃、摂食・嚥下機能に関する助言や指導を行うもの。口腔衛生の向上により疾患予防を図るとともに、食事の楽しみを増やして生活の質を向上につなげていくことが目的。

5.看護職員が行う「療養上の相談・支援」

居宅サービスを開始するにあたり、医師が看護職員による居宅療養管理指導が必要と判断した利用者に対して行うもので、利用者やその家族の療養上の不安や悩みの相談、生活上の支援が目的。相談や支援は、訪問して行うだけでなく、必要に応じて電話でも行っている。相談内容などは介護支援専門員(ケアマネジャー)に提供され、ケアプランの作成や見直しなどが行われる。

介護予防居宅療養管理指導

要支援1・2と認定され、通院が困難な利用者で、医師が介護予防のための居宅療養管理指導が必要と認めた人。要介護1〜5と認定された人と同様の居宅療養管理指導が受けられ、専門職からの指導や助言が、ケアプラン作成に反映される。

居宅療養管理指導と介護予防居宅療養管理指導の主な料金

■(介護予防)居宅療養管理指導の利用者負担の目安
要支援もしくは要介護の認定を受けている人の場合(利用料は要支援・要介護とも同じ)

1回あたりの負担 利用限度回数
医師・歯科医師 503円
月2回
医療機関の薬剤師 553円 月2回
薬局の薬剤師 503円 月4回(注1)
管理栄養士 533円 月2回
歯科衛生士等 352円 月4回
看護職員 402円 半年に2回(注2)

*1単位=10円で計算した場合。地域により金額は変動する。また、老人ホームなどの同一建物居住者をまとめて指導する場合は、料金が異なる。
*上記の費用は、介護保険の自己負担が1割の場合。一定の所得がある場合は自己負担割合が2割になる。
(注1)利用者が末期がんで疼痛緩和のために麻薬などの特別な薬を使っている場合、また、中心静脈栄養受けている場合などは、薬局の薬剤師を週2回かつ月8回まで利用できる。
(注2)看護職員による利用者の自宅訪問は、介護保険による居宅サービスの提供が開始されてから6ヵ月間の間に2回が限度とされている。

●「介護保険制度」のそのほかの説明を見る

→ 要介護・要支援認定とは?

→ 利用できるサービス・施設の種類とは?

→ 利用者が負担する費用とは?

→ 訪問介護とは?

→ 訪問入浴介護とは?