訪問看護は、高齢者が可能な限り自宅で自立した生活を送れるように、看護師などが利用者の自宅を訪問し、心身機能の維持回復を目的に、病状の観察や診療補助、療養指導などを提供するサービス。
近年、訪問看護ステーション数の増加は著しく、訪問看護サービスの利用者増加に併せて訪問看護師も増加しています。また、訪問看護師の男女比は女性67%、男性33%。看護師の総数から女性が多いことを考えると、男性が約3割というのは決して少なくはなく、むしろ訪問看護に男性の進出が進んでいることがわかります。ここでは、訪問看護で働く看護師の仕事内容、1日の流れ、平均給与、向いているタイプの他、履歴書や面接で使える訪問看護師の志望動機例文、自己PR例文もご紹介します。

訪問看護で働く看護師の仕事・業務内容

現在、医療界では、病床数の削減や入院日数の短縮化が進んでいます。その分、退院後の療養生活の重要性が増しているほか、病気や障害がいがあっても住み慣れた家で暮らしたい、人生の最期を自宅で迎えたいという人も増えています。訪問看護とは、そうした状況に対応するサービスで、看護師がお宅を訪問し、病気や障がいに応じた看護を行うことです。

訪問看護を提供しているのは、訪問看護ステーション。保健師または看護師が管理者となって運営する事業所で、一般社団法人全国看護事業協会の調査によると全国に約10,418カ所(2018年4月1日現在)あります。また、訪問看護部門を設けたり、外来部門が訪問看護を兼任する病院や診療所(クリニック)もあります。看護師はこうした事業所や医療機関を拠点に担当の各家庭を訪問し、健康状態の悪化防止や回復に向けてのお手伝いをします。主な業務は、療養生活の相談とアドバイス、健康状態の観察、病状悪化の防止・回復、点滴、注射などの医療処置、痛みの軽減や服薬管理などです

訪問看護で働く看護師の1日のスケジュール(例)

■09:00 出勤・仕事開始
所属の訪問看護ステーションに出勤。理学療法士、作業療法士などもいる事業所なので、看護とリハビリの専門職が全員揃ってミーティング。
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■09:30 出発
自転車で訪問先に向かいます(ステーションによって車移動のところも)。
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■10:00 訪問看護開始
全身の観察、体の動きの確認、排便援助(浣腸)などを行います。午前中に2件ほど訪問します。
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■12:30 昼食
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■13:30
午後の訪問先で、体調管理、ベッドから車椅子への移乗介助、おむつ交換などを行います。
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■15:00 カンファレンス
退院したばかりの方のお宅で、家族やケアマネージャー、介護スタッフも交えて今後のケアについて話しあいます。
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■16:30 訪問終了
訪問看護ステーションに戻り、カルテに記録。状態に変化があった場合など、必要に応じて主治医やケアマネに報告します。
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■17:30 業務終了

訪問看護で働く看護師の平均年収

訪問看護で働く看護師の平均年収
原則、日勤がメインとなる訪問看護は、夜勤手当がない分、一般的な病棟勤務より年収は下がり、平均年収340~430万円程度と言われています。ただし、24時間365日体制の事業所もあり、休日や通常の勤務時間外でもオンコールの対応・出動が発生する可能性があります。そうした場合の手当等は事前に確認したほうがいいでしょう。非常勤・パートの求人も多く、希望する曜日や時間帯で働くことも可能です。

訪問看護で働く看護師 メリット・デメリット

訪問看護のサービスを受けられるのは、子どもから高齢者まで、訪問看護を必要とするすべての人です。担当する相手によって病気や障がいの状態や軽重、さらに生活環境や家族構成も異なり、病院やクリニックでいくつもの診療科を経験するのと同じくらい、幅広い知識を得ることができます。

また、一人ひとりに必要な支援を基本的に自分一人で行うため、責任とやりがいの大きい仕事です。医療保険利用の場合、訪問は通常週3回までで、1回の訪問時間は30分から1時間半程度。介護保険利用の場合の1回の訪問時間は4区分あり、20分、30分、1時間、1時間半となっています。本人や家族の希望をうかがって決めますが、これだけの時間、1対1で向き合い、手厚いケアができるのは、看護師としての喜びであるとも言われています。

一方、訪問看護の難しさは、患者と家族との距離の取り方です。お宅を訪問するためプライバシーが手に取るように分かります。慣れてくると関係性も親密になります。その分、患者や家族の要求や思いを抱え込んで悩むこともあるかもしれません。また、お互いに遠慮がなくなり、うっかり口にした一言で感情を害したり、クレームとなることもあります。療養に関わること以外の私的なことがらは、「見ない」「聞かない」「言わない」を鉄則とし、一定の距離を保つ必要があります。

訪問看護で働く看護師のスキル・資格

訪問看護は、基本的に一人でお宅を訪問し、主治医の指示を受け、病院と同じような医療処置も行います。看護師としての臨床経験3~5年以上を希望する事業所(訪問看護ステーション)が多いのは、それなりの経験とスキルが必要なためです。しかし、最近は経験年数を問わないところも多くなっています。慣れるまで先輩が必ず同行するのをはじめ、教育体制を整える事業所が増えており、実践を通して学び、スキルアップすることができます。

訪問看護で働く看護師が向いているタイプ

訪問看護の看護師に向いているタイプ
「病気や障がいがあっても、住み慣れた家で暮らしたい」「人生の最期を自宅で迎えたい」。そう望んでも、もともと一人暮らしの人は負担が大きく、また、家族のいる人にしても、家族だけで療養生活を支えることは不安です。そうした人たちの役に立てるのが、訪問看護です。在宅医療や終末期医療に関心がある人に向いています。

訪問看護は、所属する訪問看護ステーションや訪問看護部門を設ける医療機関から利用者の自宅を訪問して行います。組織に属するとはいえ、独立性の高い仕事ですから、集団で行動するより、個人で自律して動きたい人におすすめです。将来、自分で訪問看護ステーションを立ち上げたい人も増えています。といっても、もちろんコミュニケーション力は必須です。主治医、介護のケアマネージャーや介護スタッフ、地域包括支援センターの保健士、理学療法士や作業療法士などの専門家などと連携できることが基本です。

履歴書や面接で使える訪問看護師の志望動機例文

療養型病院での経験を活かし、訪問看護で働きたい人のケース
東京から地元に戻ったのを機に、地域医療に直接貢献できる訪問看護の仕事に就きたいと思い、転職先を探しておりました。貴院の訪問看護ステーションは24時間緊急時にも対応し、ターミナルケアも行っていることから、やりがいが大きいと思い、応募いたしました。訪問看護は初めてですが、療養型病院での様々な経験が活かせると考えています。

長い時間をかけ、じっくり取り組むことが好きな人のケース
長期的に物事に関わっていくことが得意です。特別養護老人ホームでの勤務は5年になりますが、一人ひとりの患者様と持続的に関わることにより、認知症の問題行動を改善に導いたことも多々ありました。患者様の中には、自宅に戻ることを希望する方も多く、患者様の在宅での生活にも興味がわきました。自宅療養をサポートする訪問看護で、長期的に患者様のケアに携わりたいというのが志望理由です。

履歴書や面接で使える訪問看護師の自己PR例文

訪問看護のスキルをさらに伸ばし、成長したい人のケース
病棟勤務を経て、訪問看護の仕事を3年前から続けています。患者様と丁寧に向き合える仕事にやりがいを感じます。今後はもっとターミナルケアの経験を積みたいと考えています。貴院の訪問看護ステーションは、当地域での訪問看護の先駆けで、専門性の高いサービスを提供されていると聞きました。ぜひ私もそうした職場でスキルを磨き、貢献したいと考えています。

高齢の患者様やご家族と触れ合える訪問看護に関心がある人のケース
常に患者様とコミュニケーションを図りながら、病状観察を行ってきました。手際が良いとお褒めの言葉を頂くことも多く、時間が限られている訪問看護でもお役に立てると思います。祖母が数年前より要介護となったため、介護する側の大変さも理解しています。訪問介護は未経験ですが、患者様のケアとともに、ご家族のサポートにも努めていきたいと思います。