介護保険サービスを利用した場合、利用者はそのサービスにかかった費用の一部を負担することになっている。

原則1割だが、2015(平成27)年8月からは、一定以上の所得者に限り、利用者負担が2割に見直された。

2015(平成27)年から、一定所得者は2割の利用者負担

介護保険の利用者負担は、2000(平成12)年の制度開始以来、原則として利用したサービスの定率1割。残りの9割は保険給付としてきた。

しかし、制度開始時の平成12年度末に256万人だった要介護(要支援)認定者数は、2015(平成27)年度末には約2.7倍の600万人に膨れ上がるなど、急速に増加。保険財政を圧迫してきた。そこで、利用者負担の見直しが行われた。

2割負担の対象となるのは、第1号被保険者の所得上位20%に相当する合計所得160万円以上の者(年金収入のみの場合は280万円以上が対象)。

所得水準を個人ごとに判断するため、夫が2割負担で、妻が1割負担になるなど、世帯内で負担割合が違うこともあるので注意が必要だ。

負担割合は、要介護・要支援認定者全員に発行される「介護保険負担割合証」で確認できる。

居宅サービスでの利用者負担

自宅で生活をしながら介護保険サービスを利用する場合は、1ヵ月に保険給付される額(区分支給限度基準額)は、要介護度別に以下のように定められている。

■1ヵ月あたりの区分支給限度基準額
要支援1 / 50,030円
要支援2 / 104,730円
要介護1 / 166,920円
要介護2 / 196,160円
要介護3 / 269,310円
要介護4 / 308,060円
要介護5 / 360,650円

*上記は、介護報酬の1単位を10円として計算した場合(1単位ごとの金額は、地域によって異なります)。

基準額の範囲内でサービスを利用した場合、利用額の1割(一定以上所得者は2割)が自己負担。ただし、基準額を超えてサービスを利用した場合は、基準額を超えた分については全額自己負担となる。

なお、特定福祉用具販売、住宅改修、施設サービス等は、上記の上限額の対象ではない。

介護保険の対象外となるもの(利用者が全額負担)

以下の費用については、利用者が全額負担する。

●施設サービスの「食費」「居住費(滞在費)」
●短期入所系サービス(ショートステイなど)の「食費」「滞在費」
●通所サービス(デイサービスなど)の「食費」
●「理美容代」、「教養娯楽費」などの日常生活費
●特定指定を受けた有料老人ホームや軽費老人ホーム、認知症対応型共同生活介護(認知症グループホーム)での「おむつ代」

負担上限額を超えた場合に払い戻される「高額介護サービス費」

介護サービスの利用者負担は、所得に応じて負担上限額が設定されている。

1ヵ月に支払った利用者負担の合計額が上限額を超えた場合は、超えた分の金額が市町村から払い戻される措置が、「高額介護サービス費(要支援者は高額介護予防サービス費)」

負担上限額を計算する上で対象となるのは、居宅サービス、地域密着型サービス、施設サービスの利用者負担分。福祉用具購入費、住宅改修費は対象外)。

支給を受ける場合は、「高額介護(高額介護予防)サービス費支給申請書」に領収書や状況を証明する書類を添付し、市町村に提出する必要がある。

2015(平成27)年8月からは、65歳以上の現役並みの所得者(課税所得145万円以上)がいる世帯については、負担上限額が37,200円(月額)から、44,400円(月額)に引き上げられ、以下のように上限額が定められている。

■月額の負担限度額

     
・市民税課税世帯(現役並み所得相当):44,400円/世帯
・市民税課税世帯(課税されているが、現役並みの所得はない一般世帯):37,200円/世帯
・世帯全員が市民税非課税 :24,600円/世帯 
・世帯全員が市民税非課税で、本人の合計所得+課税年金収入が年80万円以下 :15,000円/個人
・世帯全員が市民税非課税で、老齢福祉年金受給者 :15,000円/個人
・生活保護受給者 :15,000円/個人

介護保険施設への入所で、低所得者の負担が軽減される「特定入所者介護サービス費」

施設サービス利用時の食費や居住費は原則として利用者負担だが、市民税非課税の人や生活保護受給者には、日額の利用者負担上限額が設けられている。

上限度額を超えた場合は「特定入所者介護サービス費(要支援者は特定入所者介護予防サービス費)」の補足給付が受けられる

給付対象となるサービスは、施設サービス、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、短期入所生活介護(介護予防含む)、短期入所療養介護(介護予防含む)。

給付を受けるには、市町村に申請して「介護保険負担限度額認定証」の交付を受けて、施設に提示することが必要になる。

なお、2015(平成27)年8月の介護保険改正からは、支給対象者の見直しが行われた。
それまでは月々の本人収入のみで判断していたが、2015年8月以降は、配偶者の所得や預貯金などの資産も支給を判断する条件になっている。

*「介護保険制度」のそのほかの説明を見る

→ 制度の目的、保険者・被保険者とは?

→ 要介護・要支援認定とは?

→ 利用できるサービス・施設の種類とは?