自分の人生のなかで、「1、2を争うほどつらい時期だった」という助産師学校の1年間。厳しい勉強を通して、M・Yさんは助産師になる覚悟を固めます。
そして、関東の大学病院に就職。ここで2年間勤務したのち、西日本の病院へ。未知の土地であっても、「ここだ!」と思ったらサッと動く行動力の源は、分娩介助の経験をたくさん積みたいという思いでした。

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M・Yさん(41歳)のプロフィールimage001

●看護業界歴…10年

●看護の仕事に就く前…教育関連事業所、准看護専門学校、看護専門学校、助産師学校

●転職回数…3回

●いままでの勤務先…大学附属病院(産科)、総合病院(産科)、リハビリ病院(回復期病棟)

●保有資格…准看護師、正看護師、助産師

一生懸命にやっていれば、妊産婦さんに必ず伝わる

「助産師学校の勉強は看護学校の3倍大変だけど、頑張って助産師になってね。苦労してでもやりがいのある仕事だから」
これは、看護学校のときに実習で行った病院の助産師さんに言われたことです。その言葉の意味がよくわかったのは、助産師学校に入学してからでした。

いまはどうかわかりませんが、当時、助産師国家試験の受験資格を得るためには、実際の妊産婦さんを10例受け持たせてもらい、実習するのが決まりでした。
実習とはいえ、お母さんとおなかの中の赤ちゃん、二人の命を預かっているのですから、責任重大です。肉体的にも精神的にも追い込まれるような毎日に疲れ果てながらも、助産師になることへの覚悟が持てるようになったのも、この厳しい実習を通してでした。

10例のうち1例は、妊娠期から出産、産後1カ月健診まで、ずっと受け持たせてもらいました。その妊産婦さんは口数が少なく、感情が表情に出ないような方だったのですが、お産が終わると同時に母性のスイッチが入り、晴れ晴れとしたお母さんの顔になったんですね。そして、私にこう言ってくれました。
「いままでありがとうございました。あなたは、とてもいい助産師さんになれると思います。頑張ってくださいね!」

勉強が大変でつらかったのは、当時の私に体力がなかったせいです。体力がないから気力が出ず、思考が回らない・・・。でも、そんななかでも、妊産婦さんと赤ちゃんのために一生懸命やろうという気持ちは持っていたのかなと思います。だから、このお母さんにその気持ちが伝わり、「ありがとう」と言っていただけた。
誰かの役に立ちたいと思い、一生懸命やること。学生時代の話ですが、助産師として、そして看護師として働く上でいまも肝に銘じている、私の原点です。

命の誕生に携わる分娩が、助産師のやりがい

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助産師学校卒業後は、通っていた看護学校の系列の大学病院に就職。ここで奨学金を返還しながら2年間勤務し、その後、西日本の総合病院に移りました。

転職したのは、分娩介助をやりたかったからです。大学病院の2年間で赤ちゃんを取り上げたのは、10例。1年目は分娩以外の業務を覚えないといけないため、お産に携われるようになったのは2年目からですから、正確には1年で10例。それでも少ないですよね。

どこもそうだと思いますが、大学病院の産科は助産師の人数が多く、分娩を担当する順番がなかなか回ってきません。「分娩の経験をもっと積みたい」。そう思っていたところ、看護学校時代の同級生が西日本の病院で働いていて。話を聞いてみると、たくさん分娩介助ができそうとのこと。それですぐに転職を決め、西日本に引っ越しました。
独身で身軽ということもありますが、私は何かのきっかけがあると、その流れに乗ってどこにでも行ってしまう大胆なところがあるみたいです(笑)。

でも、そこで思い切って動いて正解でした。ここの病院で取り上げたのは、4年間で300例以上。経験を積むことで、いいお産ができるよう、産婦さんに声をかけてうまくコントロールできるようになりましたし、助産師の仕事を心から楽しんですることができました。

やりがいを感じるところは人によって違うと思いますが、私はやはり、分娩が助産師としての一番のやりがいだと思っています。
たとえば、分娩が始まり、子宮口が開いてから全開するまでの最後のところ。ここで無理に何度もいきむと、産婦さんにも赤ちゃんにもストレスがかかります。でも、赤ちゃんが自分の力で出てくるのをゆっくりゆっくり待って、最後の最後に思いっきりいきんでもらうと、自然でいいお産になるんですね。そうやって、出産を頑張るお母さんと心をひとつにして尊い命を待ち受け、この手で受け止めるときの感動は言葉では言い表せません。

助産師を信じ、いろいろなことを任せてくれる医師。妊産婦さんにつねにやさしく寄り添う先輩たち・・・・とてもよい職場だったのですが、そろそろ環境を変えてみたいと思い、4年後に退職しました。

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次回は、転職後まもなく家庭の事情ができ、仕事をいったん辞めた不安の日々を振り返ります。

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