ナースになって20年になるS・Mさん。これまでの人生を振り返ると、ご縁としか言いようのない出来事がいくつもあり、「その糸に導かれるようにして進んできたと思う」と話します。
人生のターニングポイントを迎えたとき、転職を考えたとき・・・自分の決断が正しいのかどうか、迷うことがあるかもしれません。そんなとき、Sさんの「ご縁を大切にする」生き方は参考になるはずです。4回にわたってお伝えするS・Mさんの転職ヒストリーをじっくり読んでみてください。

*Sさんの転職ヒストリー 1回目2回目3回目4回目(最終回)

S・Mさん(41歳)のプロフィールimage001

●看護業界歴…20年

●看護の仕事に就く前…看護専門学校

●転職回数…5回

●いままでの勤務先…大学附属病院(婦人科)、市立病院(内科、婦人科、産科、透析科、保育園)、有料老人ホーム、デイサービス、老人保健施設、シニアマンション

●保有資格…正看護師

公務員試験の合格後、突然、看護学校進学を決断!

image003都立の看護学校を卒業後、大学附属病院に就職しました。実はそこは、中学生のとき、体育の時間に複雑骨折をし、救急搬送された病院です。

もちろん、自分が将来ナースになるなんて、当事は思いもしていません。ただ、学期をまるまる休むほどの怪我で、数カ月間、ベッドに横たわったまま、天井と看護師さんの動きをじっと見ていました。痛み止めをすぐ持ってきてくれたり、爪を切ってくれたり・・・。やさしい看護師さんを見て、「素敵な仕事なんだな」と感じたことを覚えています。

高校では、就職コースを選びました。家庭の事情もあり、とにかく早く家を出、自立することだけを考えていたんですね。ところが、公務員試験を受け、合格をもらった直後だったと思います。職員室に貼ってあった都立看護学校の推薦入試のポスターがたまたま目に留まりました。推薦に必要な成績も足りているとわかったとたん、本当にいきなり、「看護学校に行ってナースになろう」と思ったのです。

自活できるように、長期の休みにはスキー場に泊まり込んでバイトをしていため、一人暮らしを始める分くらいのお金は貯まっていました。あとは東京都の奨学金を利用することにし、7年勤めると返済が免除される「特別対応」を選択。これに加え、他にも利用できる奨学金はないかな…と探していたときに思い出したのが、中学時代に入院した、あの大学病院です。

調べると、卒業後に2年勤務すれば、無償で月に数万円支給してもらえるとのこと。都の奨学金とあわせれば、親に頼らなくても十分にこれでやっていけます。
こうして奨学金をもらいながら勉強し、お世話になった病院に就職しました。

ナースとして働く母との30年ぶりの再会

image005高校を卒業して公務員になる予定が、突然ナースになろうと決めたのは、無意識ではあるけれど、母の影響があったと思います。実は、母もナースで、66歳になるいまも現役で働いています。ただ、私が小学校2年生のときに、母と父は離婚。それ以来、母とは会ったことがありませんでした。再会したのは、つい3年ほど前のことです。

私が小学生の当時、母は、准看から正看の資格を取るために必死で頑張っているときでした。朝早く起き、家族に朝ご飯を食べさせると自転車に飛び乗って職場に出かけ、帰ってくると夜遅くまでレポートを書いて・・・なぜそこまで頑張るのかわからないながらも、そんな母の姿を見ていて、女性も仕事を持って生きていくのが当然と感じていたのかもしれません。

東京都の奨学金のなかでも7年働くのが条件の「特別枠」を選んだのは、看護学校のクラスのなかでも私ともう一人くらい。「7年も働くなんて分からないのに、大丈夫?」と言う友達もいました。でも、私にしてみれば、せっかく資格をとるのだから長く働くのが当然。友達の感覚のほうが不思議でした(笑)。

母が最近、こう話してくれました。「あなたたちには本当に申し訳なかった。ごめんなさい。でも、男の人に食べさせてもらうだけの生き方を、私はしたくなかったの」。

もっとラクに生きてもよかったのに、母には母の思いがあったのでしょう。一緒に暮らした時間は短かったけれど、それでも、生きざまをちゃんと見せてくれ、私が自立して生きていくレールを母が引いてくれていたことに感謝しています。

母との結びつきを感じた出来事はもうひとつあります。それは、母と30年ぶりに再会した3年前のこと。
当時、私は看護のなかでも高齢者介護系の仕事にやりがいを見出していました。ちょうどその転職のタイミングで、たまたま1週間ほど休みが取れたときでした。叔母から、母の近況を知らせる手紙が届き、私はすぐに母が住んでいるという九州に飛びました。

母は、少し痩せてはいたものの、昔とあまり変わっていませんでした。驚いたのは、母がまだナースをしていて、いまはデイサービスの仕事をしていると聞いたとき。
「私もナースをしていて、介護系に進んだところよ!」。離れていた時間も距離も消える、嬉しい瞬間でした。

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次回は、看護学校卒業後、大学病院から市立病院、さらに介護系へと転職する歩みを振り返ります。
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