2年間の青年海外協力隊の活動を終え、帰国。前職の大学病院から戻って欲しいと言ってもらっていましたが、地域で子どもたちの健康に関わりたいと思い始めていたA・Tさんは、東京都の区職員に転身しました。
「保育園での仕事の内容は、看護師の間でもまだあまり知られていないかもしれません。でも、奥が深く、専門性が必要な仕事です」。5年目の現在も、そのためにAさんは勉強を続けています。

*看護師転職ヒストリーAさん 1回目2回目3回目4回目(最終回)

A・Tさん(35歳)のプロフィール

image003
●看護業界歴…13年

●看護の仕事に就く前…看護大学

●転職回数…1回

●現在の勤務先…東京都区立保育園

●いままでの勤務先…大学病院(小児外科)、ボランティア:JICA・青年海外協力隊(ベトナム看護隊員)

●保有資格…正看護師、保健師

看護師は自分ひとり。病院とは違う緊張感を感じながら

青年海外協力隊の任務を終えたのは5年前。帰国してすぐに仕事探しを始め、都内某区の看護師職員になりました。勤務地は区立保育園で、異動を経て、いま2園目となります。

ベトナムに行くまでの私は、海外で自分にできることをしたい、と思っていました。でも実際に世界を見てみたら、日本でもできることはたくさんあると思うようになったんですね。
病院に戻り、いままで通り、病気の子どもたちをケアするというのもその一つ。でも、今度は、地域で子どもたちの健康に関わってみたい。そう思い、保健所や自治体などの求人情報を調べて見つけたのが、現在の区職員の仕事です。

仕事着はTシャツにジャージ(笑)。保健室の保健の先生って感じでしょうか。
園児たちが登園すると、まず各クラスを回って健康状態をチェック。0歳児クラスではミルクをつくり、お昼になれば離乳食やご飯の食べ具合を保育士さんたちと一緒に確認。
そうこうしているうちに、熱が出たり、怪我をする子も出てくるので、その子を診たり、受診に付き添ったり・・・。
病院の忙しさとは違いますけど、やることは山ほどあって、1日はあっというまに過ぎていきます。

ヒヤッとすることもあるんですよ。突然、熱が出て、朦朧としていた子もいました。
すぐに救急車を呼び、来るまで観察。場合によっては心臓マッサージも必要な状態でしたが、ことなきを得てホッとしました。

病院と違うのは、保育園では看護師は基本的に一人。同僚の看護師や医師など、他の人に助けてもらうことができません。自分が気づかなかったり、対処が遅かったら大変です。そういう緊張とプレッシャーをつねに感じています。

子どもたちを守るため、保育士さんへの訓練も計画中

image005

私は看護師として、これまで病気の子どもたちと接してきました。前の大学病院では小さい頃に植物状態になり、10代で亡くなった女の子もいました。ベトナムの病院では生まれてすぐ亡くなってしまった子も・・・。
だから、毎日元気で遊べることがどんなにありがたいことか、よくわかっているつもりですし、子どもたちの健康を守ることに責任を感じています。

たとえば、食物アレルギーの子が万一誤飲したらどうするか、感染症が発生したらどうするか、乳幼児突然死症候群になったら・・・。いつ、何が起きるかわかりませんから、保育士さんへの訓練もちゃんとする必要があります。

乳幼児突死症候群については、うつぶせ寝にならないようにしたり、チェック表を用いて呼吸状態をつねに観察しています。でも、万一そうなった場合、訓練していないと、保育士さんは対応できないですよね。
心臓マッサージをしながら人を呼ぶ、AEDを持ってくる、119番へ通報する・・・。保育士さんの誰でもができる方法を考え、月に1回の訓練をやっていこうと話しているところです。

臨床から離れていることの寂しさは確かにあります。前の病院の先輩たちとも定期的に会っていて、主任をされていたり、大学院に行っている先輩たちの話を聞くと、病院に戻りたいと思うこともあるんですよ。
でも、そんな迷いも忘れるほど、課題が次々に出てきて・・・。それに、やっぱり、子どもたちの健康に関わっていることが楽しいんですね。

うがいや手洗い、歯磨きなどの基本的なことにしても、こうして健康的な生活習慣を培うことで、これから生きていく力につながってくれたらいいなと思っています。
そして、自分の体や命、人の体と命も大切にできる大人になって欲しい。ちょっと大げさかもしれませんが、そう願って仕事に取り組んでいるつもりです。

保育園での看護業務は新しい分野のため、専門性がまだ気づかれていないかもしれません。
私立の保育園では看護師さんの入れ替わりが激しいと聞いていますけど、私が勤務する区には勤続何十年という方もいらっしゃいます。そうした方に比べたら、私はまだまだ。大先輩のみなさんに学びながら、専門性を高めていけたらと思っています。

○      ○      ○

*看護師転職ヒストリーAさん 1回目2回目3回目4回目(最終回)

ナースエージェントの求人数は国内最大級! 自分らしい仕事が探せます。