3歳の息子さんと九州に戻ってしばらくは職探し。夜勤は無理なため、なかなか条件にあうところはなく、夜勤のないクリニックに職を得たのは半年後のことでした。
それからもS・Tさんの転職は続きますが、いろいろな職場を経験するうちに、少しずつ自分の仕事観が変化していることに気づいたそう。それは、健康調査の仕事などで、患者さんの自宅での生活や家族関係も知り、広い視野で患者さんを理解できるようになったことでした。

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S・Tさん(46歳)のプロフィール

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●看護業界歴…25年

●看護の仕事に就く前…看護専門学校

●転職回数…6回

●現在の勤務先…総合病院(内科)

●いままでの勤務先…総合病院(脳外科)、療養型病院、訪問看護ステーション、クリニック(内科)、社会福祉協議会(健康調査)、総合病院(精神科)

●保有資格…正看護師

看護師としてクリニックに勤務して5年後、将来を考える

九州に戻って半年後、内科クリニックに勤めました。
ここは外来だけなので、夜勤はなし。ただ、クリニックは基本的に看護師が少ないため、急な事情ができてもなかなか休めません。息子が高熱で嘔吐していても、近くの実家に急いで連れて行き、そのまま置いて仕事に行くことも何度か・・・。
でも、つらかったのはそのくらいでしょうか。シングルマザーで子どもを育てることに必死でしたから、苦労があったとしても覚えてないのかもしれませんけど(笑)。

5年たち、息子が小学校高学年くらいになり、少し余裕も出てきた頃です。このままここにいていいのかな?と考えるようになりました。
当時、院長先生は60歳間近。後継者はなく、先生が高齢になった時、この病院はどうなっているんだろうと思うと、将来の展望がないような気がしたんですね。
その時になって慌てないよう、次を探してみよう。その頃、私は30代半ばでしたので、いまのうちならまだ転職しやすいのではないかと思い、思い切って退職することにしました。

とはいえ、次のあてがあったわけではないんですよ。いまみたいに転職サイトが一般的ではない頃ですから、退職してからハローワークに行って、そこで何か出会いがあれば決めればいいかなと・・・。前職のクリニックの将来性はともかく、自分のキャリアプランはどうなの?ですけど(笑)。

それまでの転職歴を振り返ってみても、計画性や一貫性はなし。それは、そのつどそのつど、「こんな仕事もあるんだ、面白そうだからやってみよう」という感じで決めてきたからかもしれません。だから専門性を極めることはしていないのですが、いろいろな経験ができ、それはそれでよかったのかと思っています。

普段の生活や家族関係も見て、患者さんを理解する

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クリニックを退職後、ハローワークでたまたま見つけたのが、社会福祉協議会の健康調査員の募集です。1年だけの契約でしたが、「こんな仕事もあるんだ?」という、いつもの好奇心でやってみることにしました。

健康調査は、老人の家庭を訪問し、お話を伺います。体のことはもちろん、買い物はどうしているか、お世話してくれる家族や近隣の人はいるか・・・。決められた時間の中でかなり細かいことまで聞くため、信用してもらい、心を開いてもらわないといけません。

「きれいなお洋服ですね」「そういう色がお好きなんですか」「自分でお洋服を買いに行ったりしているんですか?」
たとえばですけど、私はこんなふうに始めました。まず、相手のよいところを見つけ、率直に伝える。それが突破口になり、リラックスしてもらえ、話を広げていくことができるんですね。

誰に教わったわけでもなく、初対面の人にも臆することなく話しができたのは、これまで看護師として鍛えられてきたからです。また、ひとりで各家庭に行き、患者さんと1対1でコミュニケーションすることでは、以前の訪問看護の仕事も役に立っています。

足の踏み場もないゴミ屋敷のような家もありました。体の下に敷いたタオルが上下逆さまだったということで、クレームを言ってきた家族もありました。
介護に一生懸命な家族もあれば、そうでない家族もあり、本当にさまざま・・・。

総合病院にいて急性期の患者さんだけに向き合っているときには分からなかった、患者さんのその後の生活や家庭環境。こうしていろいろな家庭を知ることで視野が広がり、看護師は、周囲のことも全部見て、患者さん一人ひとりのことを考えなければいけないんだと思うようになりました。

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次回は、次の転職先で学んだことと、Sさんに再び訪れた大きな決断の時を振り返ります。

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