S・Tさんが次に転職したのは、総合病院の精神科。看護師のちょっとした言動が患者さんの精神状態に影響を与えるため、自分のプライベートな部分は患者さんの前では絶対に出してはいけないと思うようになったそうです。
こうして仕事ではプロフェッショナルに徹しながらも、5年後、私生活では大変な問題に直面。不登校となった息子さんを前に母親としての自信を失いかけながら、乗り越える道を必死で探していました。

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S・Tさん(46歳)のプロフィール

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●看護業界歴…25年

●看護の仕事に就く前…看護専門学校

●転職回数…6回

●現在の勤務先…総合病院(内科)

●いままでの勤務先…総合病院(脳外科)、療養型病院、訪問看護ステーション、クリニック(内科)、社会福祉協議会(健康調査)、総合病院(精神科)

●保有資格…正看護師

患者さんは、私たち看護師をよく見ている

老人の健康調査の仕事は1年間の期間限定だったため、その後は隣の市にある総合病院に就職しました。
配属先の精神科病棟は、急性期が約60床、慢性期が30床。慢性期の患者さんは、入院が10年、20年、30年という方がほとんどでした。

ここで私が気づきを得たことの一つは、看護師が患者さんを見ているだけでなく、患者さんも私たちをよく見ている、ということです。
たとえば、口紅の色がいつもとちょっと違うだけでも、「今日は明るい色なんだね」。顔色が暗いと、「どうしたの? おなかが痛いの?」と心配して言ってくれます。

楽しいことやプラスの感情は、もちろん大丈夫なんですよ。でも、ネガディブな部分を少しでも出せば、「あの看護師さんは私をこんな目で見た、嫌われている」と思い、精神状態が変わることがあります。それで薬が増えたりすることもあるほど、患者さんに影響を与えてしまうんですね。

プライベートでイヤなことがあり、イライラしたり、機嫌が悪い日は、多かれ少なかれ誰にもあります。でも、こちらのプライベートは患者さんには関係ないこと。それを仕事の場に持ち込んではいけないし、患者さんの前で出してはいけない。
それは精神科だからということではないですよね。どの科であっても、また、どんな仕事でも同じだと思います。

私は、プライベートのことはコントロールするのがプロフェッショナルだと学んだので、私的な感情は職場に持ち込まないようにしていました。でも、現実はというと・・・。いまだから笑って話せるのですが、私生活はかなり“どん底”でした。

息子の不登校をきっかけに転職活動を

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以前から子宮筋腫があったのですが、貧血がひどくなり、手術入院をしたのが、まずひとつ。それからまもなくして、今度は予想もしていなかったことが起きました。高校に進学した息子が、入学1週間もしないうちに、「学校には行きたくない」と、自分の部屋に引きこもってしまったのです。

私の出身校でもあり、地元では有数の進学校です。その雰囲気と息子が描いていた高校生活のギャップがあったのかもしれませんが、何をどう聞いても本人は何も言いません。
悶々として、不登校の子どもたちを支援するNPOにも通い、誰にも話せないでいた私の気持ちを打ち明けてみました。もしかしたら息子は両親の離婚を悲しんでいて、それが積もりに積もって、私への反抗になったんじゃないか、と。
ところが、相談員の方は、「不登校の子どもたちをたくさん見てきたけれど、息子さんを見ている限り、それは違うと思いますよ」と言ってくださったんですね。

ちょうどその頃、私がヘルニアなり、1カ月ほどまた入院することになりました。
ヘルニアは加齢が原因と言われましたけど(笑)、そこで体を休めてゆっくり考えられたのもよかったのかもしれません。

息子自身も高校に行きたくない理由はハッキリ分かっていないのかもしれない。ただ、本人の決意は一瞬たりとも揺るがないのだから、なんとか高校に戻そうとするのはもうやめよう。義務教育までは親の務めを果たしたし、私ももう十分頑張ってきた・・・。

ものすごく悩むんですけど、吹っ切ると案外と立ち直りが早いんですよ、わたし(笑)。
それで、1学期が終わった夏に中退届けを出し、私も転職することに決め、秋には転職活動を始めました。

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最終回は、2年前に九州から再び上京。「どんな経験も人生の糧になる」というSさんの現在の思いをお伝えします。

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