毎回、現役の看護師のリアルなお悩みや、役立つ豆知識をお伝えしていくこのコーナー。
今回のテーマは「病院でのクレーム対応」です。

看護師としてどこまで患者さんのことを受け止めてあげればいいか・・・。
どんなにベテランの看護師でも、職業上なかなか線引きするのは難しいことかと思います。
看護師の持っているやさしさゆえに、クレームに発展してしまった、ある例をご紹介します。

自分につきっきりで話を聞いてほしい、という患者Aさん

最近、こんな患者さんに驚かされましたと語るのは、大学病院に勤務している看護師さん(20代)。

「ある夜勤の日、一昨日入院した患者Aさんがノックもせずに、ナースセンターまで入ってきました。
『どうなさいましたか?』と伺うと、『話しを聞いてほしいから椅子に座って』と言われたので、椅子に座りました。すると、Aさんは『私は、社員●●人の会社を経営している。自宅は都内で100坪あり、△△に別荘を持っていて・・・。子ども達は、大企業に勤めていて、孫は・・・』と、ご自分のことを語りはじめました。たまたま、その時間はナースコールもならず、1時間ほどお話のお付き合いをさせていただきました。

つぎの夜勤の際も、今度は巡回中に、Aさんのお部屋で前回と同じようなお話が始まりました。最初はいやな顔もせず、聞いていたのですが、その日はナースコールが鳴りました。
慌てて、Aさんの部屋から出て、別の患者さんの処置をし、ナースセンターへもどりました。
すると、Aさんがナースセンターにいたのです。

温和だったAさんの顔は、怒りでゆがんでいます。『どうなさいました?』と冷静を装い伺ってみると、Aさんは『私の話は終わっていないんだよ!』と・・・。

そして、私に対する不平や不満を話しはじめ、途中ナースコールが鳴っても、『別の看護師が行けばいい。君は私の話を聞きなさい』と言い出す始末。運が良いことに、その日は師長が夜勤で事は収まりました。

それ以降、Aさんには時間を決めて対応させていただいています。また、『ナースコール
が鳴っても対応できないということは、ほかの患者さんの安全を損なう事態ですので、お話をずっと伺うことはできません』と師長をからAさんにお伝えしました。
本人はとても不服だった様子だったそうです。

また病院でも、このAさんの件を発端に、患者さんの対応は複数の看護師で担当することや、夜勤中に1時間以上、話を聞かないようにするということもルールで決まりました。どうしても無理な場合には別の部門の看護師さんに助けてもらっています。」

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これは、看護師さんの“やさしさ”が仇になったクレームの例です。一言でクレームと言っても、その内容はさまざま。クレーム内容や、患者さんの求めることによって対応方法も全く違ってきます。

看護師は、仕事柄、クレームや要望を言われることが多いもの。常日頃から行動に気を付けていくとともに、気になることがあったらすみやかに先輩や上司に相談する迅速さが必要かもしれませんね。