重篤な患者に対応したり、人の死に直面するのが苦手という人でも働きやすいのが、整形外科。事故によるケガなどから日常生活の動作ができなくなっている患者さんをサポートし、復帰を促す仕事は回復が目に見えることもあり、やりがいを感じることができます。
ここでは、整形外科で働く看護師の仕事内容、1日の流れ、平均給与、向いているタイプなどをご紹介します。

整形外科で働く看護師の仕事・業務内容

整形外科が対象とするのは、骨や筋肉、関節、神経など運動機能に関わる全身の器官や組織の疾患です。総合病院の中には、一般的な整形外科のほかに、脊椎・脊髄外科や関節外科などの専門分野に特化した診療科を置くところもあります。

整形外科看護師のもっとも重要な役割は、患者のADL(日常生活動作)を向上・拡大させること。事故で傷を負った患者を、手術やリハビリを経て元の日常生活や自立レベルに戻すため、理学療法士や作業療法士と連携しながらサポートします。急性期から回復期、慢性期に至る幅広いスパンの看護が求められるのが特徴です。

具体的な業務としては、ADL向上のための日常生活全般の介助、リハビリ中の歩行訓練の付き添い、転倒予防、疼痛コントロールなど。ほかに、包帯・シーネ交換、ギブスの装着といったケアや、オペ出し・オペ迎え、入退院のオリエンテーションも行います。患者の話し相手になり、不安を和らげ、ストレスを軽減するのも大事な役目。リハビリに前向きに取り組めるようバックアップします。

整形外科で働く看護師の1日のスケジュール(例)

<病棟・日勤の場合>
■08:00 出勤
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■08:30 申し送り
夜勤担当者から患者さんの状態について申し送りを受け、情報共有します。
1日のスケジュールを確認します。
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■09:00 ラウンド、看護ケア
受け持ち患者さんの部屋を回り挨拶、検温などのバイタルチェック、各種処置、包帯・シーネ交換を行います。包帯・シーネ交換の際、創部の炎症がないか丁寧に確認するのも大事な仕事です。
随時ナースコールにも対応。転倒などにつながらないよう、ナースコールがあれば素早く駆けつけます。
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■09:30 カンファレンス
医師や薬剤師をはじめ他職種とカンファレンスを行い、患者ごとの病状や必要なケアを確認したり、退院方針などについて話し合います。
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■10:00 オペ出し
オペ出しをしたあとは、オペ迎えの準備として、戻ってきたときの必要器具などを揃えます。
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■11:30 オペ迎え
昼食後は口腔ケアも。
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■12:30 昼休憩
交代で昼食、休憩を取ります。
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■13:30 退院オリエンテーション
再発を防ぐため、退院後の生活指導も大事な仕事です。
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■14:00 ラウンド、看護ケア
自力で入浴できない方の入浴介助、手術前のオリエンテーションや手術後のケア、疼痛管理などの業務に対処します。
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■15:00 病棟リハビリ
歩行訓練の付き添いや歩行介助、嚥下訓練など、患者さんのリハビリのサポートを行います。
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■16:30 看護記録、申し送り
夜勤担当へ患者の日中の状態や指示の変更点などを申し送りします。
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■17:00 退勤

整形外科で働く看護師の平均年収

整形外科看護師の平均年収は、500万円前後。一般的な看護師の平均年収が490万円ほどとされているので、他の診療科と同程度か、やや高めの傾向になっているようです。
他の科でも同様ですが、夜勤を多くこなす人ほど高収入の傾向があります。そのため日勤のみの病院やクリニック勤務の看護師は50万円~100万円ほど年収が低くなります。高収入をめざす場合は、脊椎・脊髄やスポーツ障害のように専門分野を扱う病院への転職を検討するのも良いかもしれません。

整形外科で働く看護師のメリット・デメリット

整形外科は、他科に比べ、回復して退院していく患者の割合が高い診療科です。整形外科の看護師は、生活介助をしたり、リハビリに付き添ったり、時には話し相手になったりと、患者と近い距離でコミュニケーションを取ることが必要です。それだけに、できなかったことができるようになり、元の生活を送れるようになって退院していく姿を見るのは大きなやりがいになるでしょう。

救急病院の整形外科は緊急手術もありますが、それ以外では、重篤な患者や急変する患者も少なく、予定外の残業が発生することはほとんどありません。夜勤においても容態急変というケースが少ないため、落ち着いてケアに集中できるのが魅力です。

一方で、入退院のサイクルが短く、手術も多いため、オペ出し・オペ迎えの業務にリハビリ介助、包帯やシーネ交換、入院・退院のオリエンテーションなど、さまざまな業務をこなしていく必要があります。ADLが低下し介助を必要とする患者も多く、ナースコールが頻繁に鳴ります。そのため、常に時間に追われる忙しさがありので、臨機応変に対処するのが苦手な人にはストレスになるかもしれません。また、介助などの力仕事が多いため、腰痛リスクが高い点は注意が必要でしょう。

整形外科で働く看護師のスキル・資格

整形外科では、一般的な看護スキルのほかに、シーネや包帯の固定、創部周辺の皮膚観察などのスキルが日々の業務で必要になります。また業務を通じて、骨格や筋肉、靱帯、神経など解剖学の知識が自然と身につくのは整形外科ならでは。褥瘡を発生させないための処置、転倒防止対策、痛みの緩和処置、歩行介助や生活介助など、整形外科で必要となるケアは、他の診療科でも役立ちます。とくに介護の分野で活かせるスキルです。

整形外科看護師として専門性を高めるなら、「日本運動器看護学会認定運動器看護師」「回復期リハビリテーション看護師」「骨粗鬆症マネージャー」といった資格を取得し、キャリアアップに活かすこともできます。

整形外科で働く看護師に向いているタイプ

整形外科で働く看護師に向いているタイプ
リハビリや介助などを通して、患者さんと近い距離で接するので、人と関わることが好きな人に向いています。退院後の生活指導をしたり、リハビリを嫌がる患者さんを励ましたりする機会も多いので、単に話し好きというだけでなく、明るく話し上手で、やる気を引き出すのが得意な人に適しているでしょう。

整形外科はやるべき業務が多く、それに対処していかなければなりません。そのため、フットワークが軽くテキパキと動ける人が求められます。ナースコールに素早く反応するスピード感と同時に、急いでいるときでも転倒予防に配慮する慎重さも兼ね備えていることも大切な要素です。また、整形外科のケアは、医者はもちろん理学療法士や作業療法士などの他職種の人たちと連携する必要があり、コミュニケーション能力や協調性のある人が活躍できるでしょう。

力仕事が多いことも特徴なので、体力に自信がある人にオススメです。実際、体育会系の人や体力のあるタフなタイプの人が多い職場で、男性看護師も歓迎されます。