毎回、看護や医療の最新情報を発信していくこのコーナー。
今回のテーマは「看護師のクリニカルラダー」についてです。
看護師の「クリニカルラダー」とは
日本看護協会は、2016年5月「看護師のクリニカルラダー」を開発・公表しました。(*)
「クリニカル」は看護実践における看護実践能力に焦点をおき、「ラダー」=ladder(はしご)は、経験を積みながら、目標が定められた階段(ラダー)をひとつ一つ登っていく=看護実践能力を高めていくという意味で名付けられました。
「クリニカルラダー」とは、看護師の働く場や働き方が変わっても、全国共通で活用できる看護実践能力の指標です。これは、看護実践能力を段階的に表し、到達度によって看護師の能力が示されるシステム。
このシステムにより、看護師は自分の能力段階を確認し、自己研さんやステップアップを目指すことができ、また看護管理者や施設側も看護実践能力の担保、保証が可能となります。最終的には、患者や利用者に対し安全で安心な看護提供につながることが期待されています。
「クリニカルラダー」が必要な理由
2025年に向けて、今まで例のない少子・超高齢化を迎える日本。医療提供体制の変化により、急性期から在宅医療に至るまで多様な看護提供のニーズが高まっています。
看護師の活躍の場が広がり、働き方の多様化が進むなかで、看護師に共通する看護実践能力の強化と、働く環境にとらわれない看護師の能力開発・評価システムが必要となったためです。
そのシステムの特徴は?
日本看護協会が開発したクリニカルラダーの特徴は以下4つです。
(1).あらゆる施設や場における全ての看護職に共通する能力として、看護実践能力に焦点化
(2).看護実践能力を「論理的な思考と正確な看護技術を基盤に、ケアの受け手のニーズに応じた看護を実践する能力」と定義
(3).看護実践能力の構成は「ニーズをとらえる力」「ケアする力」「協働する力」「意思決定を支える力」の4つで、これらは密接に関連し、その場においても発揮されるもの
(4).習熟段階を5段階で評価
現在はクリニカルラダーの内容やレベルの基準が施設ごとに異なっていたり、そもそもクリニカルラダーを導入・作成していない施設もあります。しかし将来的には、あらゆる施設や場で活用可能な標準化されたクリニカルラダーを用い、すべての看護師に共通する看護実践能力の育成につなげていくことがねらいです。
また、看護実践能力の担保や保証、クリニカルラダーに応じた役割や適切な処遇の活用にもつながることを期待しています。
日本看護協会は、「看護師のクリニカルラダー」の発表にあわせ、病院・高齢者施設・訪問看護ステーションの実践例とクリニカルラダーを活用するための手引きもホームページで公開しています。詳しくはこちらをご覧ください。