毎回、看護や医療の最新情報を発信していくこのコーナー。
今回のテーマは「災害支援ナース」についてです。

「災害支援ナース」とは

被災者の健康レベルを維持できるよう、被災地で適切な医療・看護を提供する役割を担っているのが「災害支援ナース」。また、看護職能団体として、被災した看護師に対しても心身の負担を軽減できるよう支えています。

実務経験が5年以上で、一定の研修を受講した看護職が都道府県看護協会に「災害支援ナース」として登録されています。

1995年1月に発生した阪神淡路大震災のあと、大規模災害に対応するために仕組みが検討され、現在の「災害支援ナース」の体制が構築されました。2016年3月現在、7,771 人が登録しています。
また、4月に発生した熊本地震でも多くの「災害支援ナース」が支援を行っています。

「災害支援ナース」の派遣の仕組み

大規模自然災害発生時には、災害の規模などに応じて「レベル1(単独支援対応)・レベル2(近隣支援対応)・レベル3(広域支援対応)」に区分し、災害レベルごとに定められた方法で、災害が発生した場所・地域へ「災害支援ナース」の派遣調整を行っています。
4月の熊本地震では4月21日からレベル3の対応となっています。

「災害支援ナース」の派遣実績について

新潟県中越地震(2004年10月)、能登半島地震(07年3月)、新潟県中越沖地震(07年7月)、東日本大震災(11年3月)、広島市豪雨土砂災害(14年8月)、茨城県豪雨災害(15年9月)などがあります。

熊本地震での支援活動

4月に起きた熊本地震では、 4月17日より「災害支援ナース」を県内派遣(レベル1)しました。18日に近隣県看護協会からの派遣(レベル2)、21日に全国の看護協会からの派遣(レベル3)を決定しました。

全国派遣の第1陣として、4月29日には関東、近畿地方の看護協会および山口県看護協会から「災害支援ナース」のべ128人(32人×4日間)を派遣しました。派遣先は熊本市、宇城市、阿蘇市、嘉島町、大津町、甲佐町、御船町、益城町、南阿蘇村、西原村の避難所(14カ所)で、3泊4日を1行程とします。全国派遣は5月末まで実施する予定です。

「災害支援ナース」に登録するためには

「災害支援ナース」に登録するための要件は、以下の通りです。

・都道府県看護協会の会員であること
・実務経験年数が5年以上であること
・所属施設がある場合には、登録に関する所属長の承諾があること
・災害支援ナース養成のための研修を受講していること

また「災害支援ナース」として登録する際に望ましい条件は、以下の通りです。

・定期的(1年に1回程度)に日本看護協会または都道府県看護協会で開催する災害看護
研修もしくは合同防災訓練への参加が可能
・災害看護支援活動も補償の対象に含まれる賠償責任保険制度に加入している
・帰還後に都道府県看護協会が主催する報告会・交流会などへの参加が可能

詳しくは、都道府県の看護協会へお問い合わせください。

「災害は忘れたころにやってくる」と云われていますが、災害はいつでも、どこでも起こる可能性があることを常に認識しなければいけません。
その時ごとに適切で、正確な援助の準備を常日頃から怠らず、看護師として災害時の対応を想定することが必要ですね。

出典: 公益社団法人日本看護協会