産婦人科が他の科と決定的に異なるのは、生命の誕生に関わる科だということ。生まれたばかりの小さな命に触れる喜びや癒やしの多い職場です。同時に、女性特有の疾患の患者へのケアや不妊など、女性の悩みや不安に寄り添うことのできる仕事でもあり、やりがいは大きいでしょう。
ここでは、産婦人科で働く看護師の仕事内容、1日の流れ、平均給与、向いているタイプなどをご紹介します。

産婦人科で働く看護師の仕事・業務内容

産婦人科には、妊娠から出産までをサポートする産科と、女性特有の疾患を扱う婦人科の2つがあります。職場としては、総合病院のほか、産科クリニック、主に婦人科系の治療を担うレディースクリニックがあります。

産科で働く看護師の仕事は、出産前後の母子の検診介助、診察介助がメインです。分娩前~分娩中は、機器の準備やモニターチェックを担当し、医師や助産師の介助を務めます。さらに出産後の母親と新生児の健康管理も大切な役割。授乳や沐浴、オムツ交換などのケアを通して母子のつながりをサポートし、退院後に安心して育児を行えるようバックアップします。

婦人科が対象とするのは、子宮筋腫や子宮がん、卵巣がんなど女性特有の疾患のほか、不妊治療も行います。幅広い年齢症の患者が対象となることが婦人科の特徴です。婦人科の看護師の役割は、医師の指示のもと各種検査や診療・処置の介助を行うこと。婦人科では手術も多く、手術前オリエンテーションや術前・術後のケアなど業務は多岐にわたります。また、抗がん剤治療などの化学療法を受けている患者のケアも重要です。

産科、婦人科の両方に共通しているのは、精神的なケアが重要だということ。安心してお産を迎えられるよう親身にアドバイスをしたり、不妊治療中の患者を励ましたり、産婦人科の看護師が果たす役割は大きいと言えます。

産婦人科で働く看護師の1日のスケジュール(例)

<産科病棟・日勤の場合>
■08:00 申し送り
夜勤からの申し送り。妊婦や母子の情報を共有します。
– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –
■08:30 妊産婦、新生児の看護ケア
母親と新生児の健康管理や検温、点滴処置など。授乳やオムツ交換のレクチャーも。
– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –
■09:00 診察介助
エコー診断の準備、各種検査の補助などを行います。
– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –
■09:30 妊婦受け入れ、分娩室準備
検温、胎児の心拍数や陣痛促進剤のモニタリングなど、妊婦の全身状態を確認しつつ、医師に適宜報告します。
– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –
■10:30 分娩介助
分娩が始まると、モニターチェックなど、間接的な分娩介助をします。
– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –
■12:30 昼休憩
昼食・休憩をとります。
– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –
■13:30 出産後の母子のケア
検温などバイタルチェックを行いつつ、育児に関する不安にも耳を傾けます。
– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –
■14:30 分娩室の準備
医療機器の準備など次の分娩の準備を進め、分娩前の妊婦の健康状態を確認、モニタリングします。
– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –
■15:30 分娩介助
モニターチェックなど、間接的な分娩介助をします。
– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –
■16:30 記録・申し送り
出産後の母子の状態を中心に、情報を引き継ぎます。
– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –
■17:00 退勤
<婦人科病棟・日勤の場合>
■08:00 ミーティング、夜勤からの申し送り
術後患者についての情報収集を念入りに行い、業務の準備をします。
– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –
■08:30 ラウンド
体温や脈拍、血圧などのバイタルを測定し、患者の状態をチェック。
包帯交換、ガーゼ交換、ドレーン抜去など、術後患者の処置も行います。
– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –
■09:30 オペ出し
手術室へ送り、担当ナースに引き継ぎます。
– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –
■11:30 オペ迎え
手術を終えた患者さんを迎えます。
– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –
■12:00 昼休憩
交代で昼食、休憩を取ります。
– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –
■13:30 手術前のオリエンテーション
明日の手術を控えた患者さんにスケジュールや注意点を説明し、医師による術前指導をフォロー。不安を抱える患者さんを精神面でサポートします。剃毛も行います。
– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –
■15:00 カンファレンス
患者さんの治療方針について職域を超えて意見交換をします。
– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –
■16:30 記録・申し送り
看護記録を作成、夜勤看護師へ申し送りをします。
– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –
■17:00 退勤

産婦人科で働く看護師の平均年収

産婦人科看護師の平均年収は400万円~500万円。
総合病院の産婦人科勤務の場合は、他の診療科と大きな違いはなく450万円~500万円ほど。夜勤の量で差がつきます。病棟ナースは残業や時間外も多くなりがちですが、外来は夜勤がなく残業も多くないため、基本給にプラスされる各種手当の額が少なくなります。
産科クリニックで働く看護師の平均年収は、夜勤手当も含めて400万円ほど。施設によって差がありますが、一般的に総合病院勤務よりやや低めとなっています。

産婦人科で働く看護師のメリット・デメリット

命の誕生という祝福に満ちた空間で働くことができるのは、産科の看護師ならではの大きな魅力でしょう。産科・婦人科とも、同じ女性として妊婦や患者に寄り添い、安心感を与える存在になれることもやりがいにつながります。
また、自分自身が妊娠・出産した場合、産前・産後や育児休業への理解が得られやすいのも産婦人科のメリットで、安心して働ける環境と言えるでしょう。自身の妊娠・出産経験を、妊婦や母親へのケアの場面で役立てることもできます。

一方、ホルモンバランスの変化や出産の不安からナーバスになっている妊婦や、中絶や不妊などデリケートな悩みを抱えた患者も多いことから、コミュニケーションには細心の配慮が求められます。看護師も、流産や死産という悲しい場面に立ち会わなければいけない可能性もあり、対応の難しさや気持ちの切り替えに悩む人もいるかもしれません。
そうした難しさをデメリットと考えるか、「だからこそやりがいのある仕事だ」と考えるかで、産婦人科看護師の仕事の捉え方が変わるのではないでしょうか。

産婦人科で働く看護師のスキル・資格

産婦人科は、内科病棟と外科病棟の両方の特徴を持っていると言われます。周産期看護から新生児看護までと対象も幅広く、さらに女性特有の疾患についての知識も必要。他の診療科とは異なる専門知識や看護技術の習得が求められる職場です。

産婦人科で働くにあたっては、特別な資格は必要ありません。助産師の資格を持っていれば、赤ちゃんを取りあげるといった直接的な分娩介助もできるので、仕事の幅を広げるために助産師資格の取得をめざす人もいます。

産婦人科で働く看護師に向いているタイプ

産婦人科で働く看護師に向いているタイプ
産婦人科では、妊婦や患者の身体だけでなく、精神的なケアも看護師の大事な役目。繊細な気遣いができる人、そして「女性の力になりたい」という強い思いを持って行動できる人が向いています。
流産や死産の場面や、婦人科疾患の患者さんの悲しみや痛みを思いやるやさしさが求められるとともに、メンタルの強さも持っていなければ務まりません。しっかり感情をコントロールし、冷静に行動できることが産婦人科看護師に求められる大事な要素です。

お産は毎回タイムテーブルどおりに進むわけではないので、産科の看護師は、予想外のことにも動じず、どんと構えていられるおおらかなタイプの人の方がよいでしょう。何ごともルーティン通りに進めたいタイプの人だとどうしてもイライラが募り、母親に不安を与えてしまいかねません。出産経験を持つ看護師も、妊婦や母親にとっては心強い存在。出産や育児の体験が大いに活きる職場です。