医療・介護現場ではなく、企業で働く看護師を一般的に産業看護師(企業看護師)といいます。企業で働く産業看護師は企業内の診療所や医務室(健康管理室)に勤務し、従業員の健康管理をメインとした業務を行います。企業は他に、治験センター、臨床開発モニターやコールセンターなど様々です。
ここでは、企業で働く看護師の仕事内容、1日の流れ、平均給与、向いているタイプの他、産業看護師を希望する方向けに履歴書や面接で使える志望動機の例文や自己PRの例文をご紹介します。

産業看護師(企業看護師)の仕事・業務内容

比較的規模の大きな企業では、医務室や健康管理部門が設置されています。そこで看護師は、健康診断の実施とフィードバックまでを担当するのをはじめ、保健指導や健康相談、急病やケガの処置を行います。病院勤務の看護師を病院看護師と呼ぶのに対し、企業の場合は産業看護師や企業看護師と呼びます。

このほか、企業での看護師の活躍の場はたくさんあります。治験を受託する企業で業務サポートをする治験コーディネーター(CRC)、治験のモニタリングをする臨床開発モニター(CRA)、医療機器メーカーで営業をサポートするクリニカルスペシャリストなど。さらにまた、製薬会社や医療機器メーカー、保険会社などのコールセンターなどで問い合わせや健康相談に応じる仕事もあります。

産業看護師(企業看護師)の1日のスケジュール(例)

■09:00 始業
メールチェックをし、返信が必要なものはその場で即返信。本日のスケジュールを確認し、業務開始。
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■10:00 面談の連絡
健康診断の結果を確認し、産業医との面談を希望する人に対応し、日程をセッティング。また、こちらから面談が必要と思う人にメールや電話で連絡します。
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■11:00 面談
産業医による面談のためのカルテ等を準備し、面談に同席します。
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■12:00 昼休み
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■13:00 カルテ入力
健康診断の結果を電子カルテに入力。数年間の健康状態が一目でわかるよう工夫してデータ化しています。
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■15:00 研修資料作成
総務部主催の健康増進教育研修のための資料を作成します。
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■16:00 カンファレンス
健康診断後のフォローアップを今後どうしていくか、産業医と話し合います。
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■17:00 終業

産業看護師(企業看護師)の平均年収

企業で働く看護師の平均給料
企業の医務室や健康管理室に限って言えば、夜勤や残業もほとんどありません。会社によりますが、ほぼ9時5時勤務のため、病棟勤務の平均年収より下がり、450~500万ほどとなっています。企業の規模が大きいほど年収が上がる傾向にあるのは一般的なOLと同じです。一方、治験コーディネーターや臨床開発モニターは年収が高く、600万円以上というケースも。その分業務内容はハードで、高いパフォーマンスが求められます。

産業看護師(企業看護師)のメリット・デメリット

基本的に夜勤がなく、土日祝日が休日。病院などと違って立ちっぱなしで働くことはなく、PCでのデータ管理などデスクワークが中心。体力的にも心理的にも負担が少ないため、ワークライフバランスを考えた働き方をすることができます。

ただし、医療処置を行う機会も少ないため、医療のスキルを高めることはできません。将来、臨床の現場に戻る予定なら、看護師としての腕が落ちることは覚悟しておいたほうがいいでしょう。その分、PCスキルやビジネスマナーが身に付くほか、さまざまな職種や領域の従業員と接して得られる気づきは新鮮で、仕事や働き方、社会に対する視野を広げられるのもメリットです。

また、看護師の同僚は少なく、多くて数名、なかには一人勤務体制の企業もあります。病院ならチームが変われば雰囲気が変わり、患者も次々に入れ替わり、毎日必ず変化がありますが、そうした刺激は少なくなります。自分で課題を見つけたり目標を設定しないと仕事がルーティンワーク化する可能性があるため、相談相手やメンターのような役割をしてくれる人を部署や社内を超えて見つける必要があります。

急病やケガに対応したいという人は、テーマパークや百貨店、空港などの看護室も選択肢の一つです。また、外に出、あちこち飛び歩いて働きたい人は治験コーディネーターや臨床開発モニターなどがおすすめです。

産業看護師(企業看護師)のスキル・資格

産業看護師というのは資格ではなく、通称です。看護師や准看護師であれば業務は十分こなせますが、数年の臨床経験を求める企業が多いようです。また、保健師に限って採用する企業もあります。とくに応募条件になっていなくても、保健師資格をもっていると有利です。現役看護師がこれから保健師の資格取得をめざすのは経済的にも時間的にも簡単なことではありませんが、今後のステップアップ目標にするのもいいかもしれません。

産業看護師(企業看護師)に向いているタイプ

企業の看護師に向いているタイプ
看護師の転職動機の一つとして、「医療以外の世界を知ってみたい」という話を聞くことがあります。このように、いままでとまったく違う環境で新しい働き方を見つけたい人におすすめなのが一般企業です。業種が異なるのはもちろん、対象とするのは患者ではなく健康状態の働く人々です。そうした人たちが毎日元気に働き、暮らしていくためのお手伝いをしたい人におすすめです。

最近は働き方改革も進み、生活習慣病の予防など、健康的な生活への意識も高まっています。とはいえ、仕事に追われているとそうした生活はなかなかしにくいのも現実です。また、近年は仕事上でさまざまなストレスを抱えている人が増えています。ストレスがたまることで、体の不調のほか、自律神経失調症やうつ病などの病気を引き起こすリスクも高まります。心のケアについては専門のカウンセラーが対応しますが、面談で話を聞くこともあります。職場のメンタルヘルス対策などに興味がある人は勉強してみるのもいいでしょう。

履歴書や面接で使える企業看護師(産業看護師)志望動機例文

得意を活かす志望動機例文

誰とでも打ち解けやすい人のケース
これまで、過酷な環境の中で追い詰められ、体調を崩した患者様を多く見てきました。貴社の企業看護師を志望した理由は、社員のメンタルケアに力を入れているからです。性格や年齢が異なる社員の皆様の話を聞くためには、コミュニケーション力は必須であると思います。誰とでも打ち解けやすいという性格を活かし、皆様のメンタルケアに努めたいです。

コミュニケーション力が高い人のケース
産業看護師は、社員の身体や心の悩みを聞くこともあり、コミュニケーション力が必要だと考えています。私は誰とでもすぐに打ち解けられる性格です。自分から声をかけるだけでなく、相手の話をよく聞くことも心がけているため「聞き上手」と言われることもあります。デリケートな悩みは、産業看護師にもなかなか言いにくいものだと思いますが、安心して話して頂ける雰囲気づくりに努めたいと思います。

異業種から転職の場合の志望動機例文

例)内科病棟から産業看護師に転職を希望
看護学生の時から産業看護師に興味を持っていましたが、臨床経験を重ねてからという思いがありました。内科病棟で10年の勤務を経て、改めての挑戦となります。ストレスチェックの義務化で、産業看護師が果たす役割も大きくなっていると感じます。企業で働く人材の健康管理・ストレス軽減のために、働きかけていきたいと思います。

例)異なる診療科から産業看護師に転職を希望
内科、循環器科で経験を積むなかで、健康管理と病気予防の重要さを痛感したのが保健師をめざすきっかけになりました。今後は産業保健師として、健康管理とメンタルヘルスの両面から貢献していきたいと考えています。今回、従業員の健康づくりに積極的に取り組んでいる貴社の募集を知り、ぜひお力になりたいと思い、応募させていただきました。

経験を活かす志望動機例文

これまでの経験と実績を即戦力として活かしたい人のケース
3年間、一般企業の保健室に勤務し産業看護師をしていましたが、転居のためクリニックに転職した経緯があります。大勢の社員の健康管理を担う仕事はやりがいがあり、機会があれば産業看護師に戻りたいと考えていたとき、貴社の応募を知りました。クリニックでも、生活習慣病外来で一貫して健康指導に携わってきましたので、即戦力としてお役に立てると考えています。

履歴書や面接で使える企業看護師(産業看護師)自己PR例文

・内科病棟で10年間勤務を続けてきました。企業で働く人々の健康管理を担う産業看護師は、看護学生の頃から興味があった分野です。患者様の話をうまく聞き出すことができるように、傾聴のスキルの勉強も続けてきました。ストレスは身体的な不調にもつながります。ストレスを抱えながら働き続ける会社員をサポートするために務めてまいります。

・産業看護師は、社員の身体や心の悩みを聞くこともあり、コミュニケーション力が必要だと考えています。私は誰とでもすぐに打ち解けられる性格です。自分から声をかけるだけでなく、相手の話をよく聞くことも心がけているため「聞き上手」と言われることもあります。デリケートな悩みは、産業看護師にもなかなか言いにくいものだと思いますが、安心して話して頂ける雰囲気づくりに努めたいと思います。

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