東埼玉総合病院 秋元里美さん 2 ~注目の看護師インタビュー

投稿日:2016/07/13

高知県で看護師として勤務し始め、ご主人の転勤で埼玉県に転居。育児休職を経て、クリニックや訪問看護の仕事に就き、10年ほど前からは、総合病院に勤務し始めた秋元さん。お子さんも大きくなり、水を得た魚のように、看護師の仕事にまい進していきます。2回目の今回は、主に乳腺・内分泌外科外来で勤務する秋元さんの様子をお伝えします。

*秋元里美さんインタビュー 1回目2回目3回目4回目(最終回)

秋元里美(あきもと・さとみ)さん

東埼玉総合病院内 在宅医療連携拠点 コミュニティナース。経験30年のベテラン。高校卒業後に准看護師資格を得て総合病院に勤務。29歳のとき一念発起し、看護学校に入りなおして正看護師資格を取得。復帰後に結婚し、出産・育児のため10年間休職する。クリニック、訪問看護事業所勤務等を経て、2005年から東埼玉総合病院に勤務。2016年4月からは地域を支える看護師(現職)となる。

13年ぶりの病院勤務は戸惑うことばかりだったが

――東埼玉総合病院での勤務は、外科外来への配属を望まれたのですね。その理由は?

その前にクリニックや訪問看護の経験を3年以上したとはいえ、病院勤務からは13年遠ざかっていました。その間に看護現場もすごく変わりましたよね。

私がもっとも変わったと感じたのは、「言語」です。私たちの頃は、ドイツ語でカルテを書いていました。「いつの時代?」と笑われるのですが(笑)。日常的なやりとりも、血圧はズルク、胃のことはストマックではなくて、マーゲン。言葉のやりとりも、一度日本語にしてから英語にするなど、慣れなくて大変でした。

また、手書きがほとんどだった事務も、パソコン中心になり、関係者で情報を共有することが容易になっていました。よいこともたくさんあるのですが、覚えることも多かったですね。医療の進歩も目覚ましく、はたしてついて行けるのか、心配になっていました。

そんな中、外科の傷の手当などは、基本は変わりません。ほかに覚えることが多い分、少しは迷惑をかけずにすむかと思い、希望しました。実際に勤務することになったのは主に乳腺・内分泌外科です。乳ガンの患者さんなどが外来でいらっしゃいます。

東埼玉総合病院は社会医療法人ジャパンメディカルアライアンスが運営。「社会医療法人」とは、平成19年に新たに施行された制度で、救急医療やへき地医療など、地域に貢献し、かつ経営に対する透明性が高く、公益的な基準を満たす医療法人に対し認定されるもの。

「人対人」として、患者さんに接することが大切

――病院ナースとしての復帰当初は、どんなことが課題でしたか?

さまざまなことがありましたが、一番は患者さんへの接し方でした。周知のとおり、乳ガンは女性にとっては非常に深刻な病気で、患者さんの多くは死を意識していらっしゃいます。そんな方に、どんなお声がけをし、勤務していったらいいのか、自分の立ち位置が決まらずに過ごしていました。

しかし、長く訪問看護に従事し、看取りも行っていたベテラン看護師に助言されたんです。「乳ガンの患者さんも、ひとりの女性よ。私たちは、ひとりの人としてその方に接し、自分たちも関わればいいのよ」。
ああ、そうだ、大切なことを考え違いしていた、と思いました。乳腺外来は、長く通院する方が多いんです。初診の方、大事に至らない方ももちろんいますが、入院をし、手術後に抗がん剤治療のために通う方が多いのです。頻繁に来られる方も多く、しかも、不安を抱えていらっしゃる。だからこそ、副作用の情報など、医療面でのサポートとともに、ほっとする空間づくりを心がけることが必要だと思いました。

――実際、「抗がん剤治療室」の立ち上げにも参加されたのですね。

化学療法は、体に負担がかかる方も多く、体調によっては非常につらい思いをされることも多いのです。そんな中、少しでもなごんでいただけるような空間づくり、スタッフの心構えなどを考えていこうと、立ち上げから関わらせていただきました。リーダーは別の方がいらっしゃいましたが、自分も中心メンバーの一人として治療室の理念を作っていけたのは、今のコミュニティナースの仕事にも大いに役立っていると思います。

次回は、乳腺・内分泌外科から、院内の在宅医療に関わることになったいきさつなどを伺います。

*秋元里美さんインタビュー 1回目2回目3回目4回目(最終回)

コミュニティナースの仕事内容

*秋元さんが勤務する東埼玉総合病院の場合

■市内31か所にある「暮らしの相談室」に出向き、市民の健康相談や生活相談にのる。
■暮らしの保健室などにも参加しない高齢者を包括的にとらえてアセスメント調査をする。
■支援が必要な人を、医師会や地域包括支援センター、行政などと連携しながら必要な支援につなぐ。
■医療介護連携や多職種協働に向けた教育を目的としたワークショップを開催。
■地域で活躍するインフォーマルサービスの担い手たち(コミュニティデザイナー)の育成、ネットワーク化、サポート