仕事を続けていく道のりは、必ずしも一直線とは限りません。とくに女性は、結婚、出産、育児などのライフイベントが起こると、転職や離職につながることも。T・Rさんも、看護師と出産・子育ての両立を悩み、考えてきた一人。

Tさんの体験談は、転職を考える人、ブランクからの復職を考える人の参考になるはずです。4回にわたってお伝えするTさんの転職ヒストリーをじっくり読んでみてください。

*Tさんの転職ヒストリー 1回目2回目3回目4回目(最終回)

T・Rさん(44歳)のプロフィール

1_1●看護業界歴…9年

●転職回数…7回(非常勤での勤務先含む)

●いままでの勤務先…がん専門病院、総合病院、調剤薬局(医療事務)、クリニック(内科)、訪問看護、他

●保有資格…正看護師、ケアマネジャー、第一種消化器内視鏡技師

自力で生きていける仕事に就きたい

私が看護師を志したそもそもの動機は、親元から離れ、早く自立したかったからです。公務員の父はとても厳格。事あるごとに、「あれをしてはいけない、これは駄目」と言われて育ちました。

そうやって行動を制限されてきたことへの反発心もあったのだと思います。「家から通える大学ならいい」という勧めを振り切り、隣県の県立看護専門学校を自分で探し、進学しました。

ここなら学費が安く、親に金銭的な厄介をかけずにすむ。なにより、看護師は一生働いていける仕事。独立志向が強かった私にとって、自立への一歩を踏み出せることが決め手でした。

看護学校を卒業後は、県が運営するがん専門の大病院に就職。卒業生の半数以上が就職する病院でした。私もごく自然に「ここで働くもの」と思っていたので志望通りの進路です。

ただ、将来、ステップアップの時期や他の選択肢を考えることもあるかもしれません。そのときの武器になるように、働きながら保健師の資格も取ろうと計画しました。

私が学んだ看護学校には保健師養成の専攻科もあり、ここで1年間勉強すれば保健師の受験資格が得られます。とはいえ、人気のコースで、編入試験は高倍率。しかも、新人ナースですから、仕事に慣れるのに精一杯。試験勉強までする時間も気力もありませんでした。

そこで新卒1、2年目は職務に専念。3年目に入った時、病棟勤務から外来勤務にしてもらい、勤務後、保健師の資格取得のための学校に通いました。

でも、約2年間チャレンジしたのですが、目的はかないませんでした。保健師の資格も持っていれば、働き方の可能性はもっと広がっていたかもしれない…。いまでもそう思うことがあります。でも、頑張って勉強したことに悔いありませんね。

看護師として長く働き続けている自分がイメージできない

1_2保健師の勉強との両立をあきらめた頃は、私にとって仕事が面白くなり始めたタイミングでもあります。看護師としての基礎を固めることが大切と思うようにもなっていました。

私が勤務していた病院は、「バケツ3杯の涙を流すほど叱られて一人前になる」という厳しい教育指導が伝統です。ちょっとでも努力を怠ると、婦長やドクターからすぐ叱責が飛びます。ひと目につかない場所で私も幾度泣いたことか。
でも、そのおかげで、看護の技術も、患者さんへの接し方も、看護師としての基礎をしっかり身に付けることができました。

3年目から外来勤務になり、全部の疾患を診るようになってから、さらにいろいろなことを学びました。内視鏡室に配属になった時は、内視鏡技師の資格があるといいと思い、同期のみんなを巻き込んで勉強し、取得。こうして専門知識や技術を学べば学ぶほど、看護師の仕事にやりがいを感じるようになったのです。

ただ、その一方で、このまま看護師を続けた後の自分の姿を想像しにくくなっていました。入職4、5年の中堅となると、大変な業務をどっと任され、仕事に忙殺されるようになります。婦長をはじめ、大先輩たちは独身の方ばかり。

「バリバリ働くには結婚しないほうがいいのかしら? でも私はいつか結婚したい。だったら仕事を続けても先がないのかも…」。そんなふうに思い始めてもいました。実際に結婚したのはもっと先なのですが、この頃から今の夫とつきあっていて。どこかで結婚を意識している部分があったのかもしれません。

5年を区切りに、これからを改めて考えてみることにしました。親から独立したい一心で選んだ職業。選択に間違いはなかったけれど、病院以外の世界を知りません。社会人としての視野が狭いと、患者さんやご家族のことを理解するのが難しい。患者さんと一緒にがんと闘い、苦しみを乗り越えていく仕事の重さを考えれば考えるほど、外の世界を知らない自分の未熟さを痛感するばかりでした。

病院以外の世界に自分を置いてみよう。

こうして、いったん看護師の仕事から離れることにしました。

○      ○      ○

次回は、まったく異なる仕事に転身するTさんの様子をお伝えします。
*Tさんの転職ヒストリー 1回目2回目3回目4回目(最終回)

ナースエージェントの求人数は国内最大級! 自分らしい仕事が探せます。

アイコン関連記事
~関連テーマの記事を紹介~