3交代での激務は若いうちしかできない

最初の病院には5年間勤務して退職しました。これといった理由があったわけではなく、そろそろ環境を変えてみたかったんです。住む場所も変えたかったので、大阪から京都に移りました。

転職したのも前職と同じく急性期の総合病院。24時間救急病院なのも、3交代勤務なのも一緒なのですが、こちらはオペの件数がとにかく多くて･･･。とくに高名な眼科医が他の大学病院から来る時は、夜中から執刀することもたびたび。患者さんが多く、そこまでしないと対応できないんですね。

加えて、がん患者の放射線療法、皮膚移植、耳鼻科オペ････準夜勤の時も帰るのは新聞配達員さんが動き出す頃で、次が日勤なら、休んでいる時間もなくまたすぐ出勤･･･。
あまりにハードワークで、結局、ここは1年しか続けられませんでした。

20歳で看護師になってから、26歳まで急性期の総合病院。いま振り返ると、この頃は若かったからできたんだと思います。いまの私には、とても無理（笑）。頭も体力もとてもついていけません。ただ、当時も、このまま若さの勢いだけではやっていけなくなるだろうとも感じていました。

そこで転職先に選んだのが、療養型の病院。最初にお話ししたように、看護学生の時に面接を受け、もしかしたらそこに入職が決まっていたかもしれなかった、あの病院です。
私は忘れっぽいんでしょうか（笑）？　私が事務長さんのことをすっかり失念していたのに、「あの時の人だよね、○○学校の○○さん」と名前まで言われ、本当に驚きました。

6年前のあの時、「きみは急性期の病院がいいと思うから、療養型のうちではなく、そっちにしなさい」と、最初の総合病院を勧めてくれた事務長。巡り巡って、奇しくも出発点に戻ったような転職となりました。

認知症の方がすることには必ず理由がある

この病院では認知症の患者さんが多かったのですが、最初から私に抵抗はまったくなく、むしろ、自分がやりたかったのはこれだったんだとすぐ気づきました。

拘束もしない病院で、そもそも師長さんが、「もし床に寝たがったりしても、拘束はせず、そうさせてください。そしたら、畳の部屋に布団を敷いてみたらいいでしょう？」というような人。どんなことにも理由が必ずあって、ちゃんとそれを汲み取って対応することが大切。そうすれば患者さんの気持ちが落ち着くという信念を経験から持たれていました。

本当にその通りだと思います。
数歩しか歩けないような人でも動き回ろうとするのは、どこかに行きたいから。散歩だというなら一緒に歩き出してみる。やはり数歩でガクッとなって、すぐ帰りたいと言い出したとしても、歩きたかった気持ちと数歩でも歩けたことをまず認めた上で、「もう少し足の力をつけないと歩けないですね。また一緒に頑張ってみましょう」と丁寧に話すと、みなさん納得されるんですよ。
「だからダメって言ったでしょ。転んで骨が折れたりしたら大変だから、これからは行ってはいけませんよ」と、頭ごなしに言う必要はまったくないんですね。

話すことも行動も、必ず理由があって、患者さんのことを知れば知るほど、私はその人をもっと知りたくなるんです。どんな生い立ちで、どんな学校に行き、どんな仕事をして、家族とどんな家庭生活を送って･･･。そして、どうしてこの方は認知症になったのか、何かきっかけがあったのか、ということまで突き止めて知りたいと思うようにもなっていきました。

認知症になる原因はまだ解明されていませんが、認知症について勉強するために外部の研修にも行かせてもらったりしてやりがいをもって働くうちに、あっという間に10年が経っていました。そして、ちょうどその頃、祖父が病気になり、祖母や母が介護に直面することになりました。

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最終回は、家族の介護問題をきっかけにリハビリ病院に転職してからのKさんの現在の心境をお伝えします。

＊看護師転職ヒストリーKさん 1回目、2回目、3回目、4回目（最終回）