すでにマスコミなどで取り上げられ、話題になっている「マギーズ東京」。いったいどんな場所なのか、編集部が、オープンした10月に訪ねてみました!

イギリスのマギーズセンターが世界に広がり、ついに日本へ

マギーズ東京は、イギリスのマギーズセンターの高いハードルをクリアし、日本で初めて正式承認されている、がんに影響を受ける人たちのための居場所です。

「がんの治療中であっても、患者ではなく、ひとりの人間として、ほっと自分を取り戻せるような家庭的な場と、医療的知識のある友人のような看護職・心理職によるサポートがほしい」。がんで治療中のマギー・ジェンクスさんは、こう願いました。それを担当看護師のローラ・リーさん(現マギーズセンターCEO)と、夫で世界的に高名な建築評論家の夫が受け止め、病床のマギーさんもプランを練り、そして生まれたのが、イギリスのマギーズセンター。1996年のことでした。

マギーズセンターでは、くつろげる建築やインテリア、そしてお茶を飲みながら話せる友人のようなスタッフが迎えてくれます。病気のことを気兼ねなく話せ、自分の不安や生活への願いも語ることができる。話を聞いて一緒に考えてくれるスタッフがいるからです。この環境と人との関係に勇気をもらい、力を取り戻して自分で歩んでいく――。それこそが、マギーズセンターの理念であり、役目です。イギリスのマギーズセンターから世界に広がり、英国と香港など約20のマギーズセンターが生まれています。

がん患者本人や家族・友人が、無料で気軽に訪れることができる

ひとりになって泣けるトイレがあることも「マギーズセンターの建築概要」に含まれる
ひとりになって泣けるトイレがあることも「マギーズセンターの建築概要」に含まれる

日本でも、がん患者やその家族・友人には「マギーズセンターのような場所と関わりが必要」という考えから生まれたのが、「マギーズ東京」です。もともとマギーズセンターの考えに感銘を受け、地域住民の健康や生活の相談にのる「暮らしの相談室」を東京都新宿区に開設していた訪問看護師・秋山正子さんのもとに、20代でがんを体験した報道記者・鈴木美穂さんが訪れ、これが契機となってふたりが共同代表理事に。築地市場の移転で話題になっている豊洲の地に居を構え、2016年10月10日にオープンした、というわけなのです。

敷地内には、ほっと落ち着ける木の建物が2棟。向かって左側が、主にお話をしたりお茶を飲んだりできる建物。ゆったりとしたソファのあるスペース、キッチンつきでお茶を飲めるダイニングスペースなどがあります。ウッディなテラスにもさんさんと光が差し込み、すがすがしい雰囲気です。その隣の建物は、小さなセミナーやリラクゼーションなどのエクササイズにもちょうどよさそうなオープンスペースです。

マギーズ東京で訪れる人を迎え入れるのは看護師・助産師・保健師である秋山センター長をはじめ、心理療法士やがんなどを専門とする看護師やその他スタッフたち。英国マギーズの研修を受けたセンター長と心理士が中心になり、がん専門看護師らが応援しています。

建設や運営はすべて、個人や企業、団体の寄付と協力によって成り立っているのも、イギリスのマギーズセンターと同じ。大勢の人たちの賛同と熱意で活動していきます。

豊洲での実践は、2020年までのパイロットプロジェクト。2020年以降の活動継続を模索すること、マギーズ流サポートを全国に発信することが今後のミッションです。がんで闘病中の人、その家族や友人、そしてがんに悩む全ての人達の心に届くマギーズ流サポートが日本のあちこちで行われ、多くの人たちがほっとして自分で歩み始めることを応援したいですね。

<三輪 泉(ライター・社会福祉士)>

マギーズ東京
東京都江東区豊洲6-4-18
ゆりかもめ「市場前駅」徒歩3分
TEL:03-3520-9913
FAX:03-3520-9914
開館時間:月曜日~金曜日(午前10時~午後4時まで 祝日は休み)
※土日・祝日はイベント時のみオープン