毎回、最新の看護や医療の最新情報を発信していくこのコーナー。
今回のテーマは「看護師等の届出制度」についてです。

「看護師等の人材確保の促進に関する法律」(人確法)の改正により、2015年10月1日から、国の制度として看護師等の届出制度が施行されています。

これにより保健師・助産師・看護師・准看護師の免許保持者は、現在の職場を離職した場合などに、都道府県ナースセンターへ氏名や連絡先などを届け出ることが努力義務となりました。また、現在、免許を保持しながら看護職として就業していない潜在看護職も届出の対象となります。

どこへ届ければいいの?

届出先となる「都道府県ナースセンター」は、都道府県の委託で、都道府県看護協会が運営しています。また公益社団法人日本看護協会では、厚生労働省の委託で「中央ナースセンター」を運営しています。

届出は届出サイト「とどけるん」や、全国の都道府県ナースセンターの窓口で行えます。

届出制度の目的は?

現在、全国で約160万人の看護職が就業していますが、国の推計では2025年には約200万人の看護職が必要とされる見込みです。その差は約40万人! 今のままでは看護職の不足が懸念されています。
一方で、潜在看護職の数は、約71万人に上るとの推計もあります。

この制度の目的は、看護職とナースセンターが離職後も“つながり”を持ち、継続的なキャリア支援や迅速な復職支援を可能にすることです。
これまでは一度、離職すると、所在・状況の把握が困難でしたが、この制度により潜在化防止の効果も期待されています。

届け出た看護職には、研修や交流会などの情報をタイムリーに提供。復職を希望した際には、今までナースセンターが提供してきた無料職業紹介や復職支援研修などの機能を生かして、迅速で丁寧な支援を行うことができるようになるしくみです。

図1 届出の努力義務化施行後のナースセンターによる支援体制(日本看護協会)
図1 届出の努力義務化施行後のナースセンターによる支援体制(日本看護協会)

ナースセンターとは?

ナースセンターは、1992 年に人確法に基づき設置されました。
中央ナースセンターは、日本看護協会が厚生労働大臣の指定を受けて運営し、無料職業紹介サイト「eナースセンター」やシステムの管理・運用などを行っています。

都道府県ナースセンターは、47の都道府県看護協会が各都道府県知事の指定を受けて運営しており、「ナースバンク事業」(無料職業紹介)や「訪問看護支援事業」「看護の心普及事業」などを実施しています。

今後、ナースセンターでは、看護師等の届出制度と復職・就業支援事業を、活動のふたつの柱としていくよう。看護職が求職者になる前の段階から潜在化予防に向けた支援を実施し、生涯を通した看護職への支援を行っていく予定です。

超高齢社会を迎える日本では、看護職不足は継続していきます。看護師にとっては、就職や転職には困らない状況が続くと思われます。

しかし裏を返せば、病院や施設側は、ニーズにしっかりマッチしていない人材でも、採用せざるをなくなるかもしれません。つまり、応募さえすれば、自分に合わない労働環境の職場にも、即採用されてしまう可能性がある、ということも念頭に置かなくてはいけません。

看護職で就職や転職をする際には、自分自身の妥協点、絶対に譲歩出来ない点を確認し、ベストな転職先を選べるよう準備しておく必要があります。

出典: 公益社団法人日本看護協会 看護師等の届出制度